「失われてわかる日常の価値」浅田家! ゲンさんの映画レビュー(感想・評価)
失われてわかる日常の価値
最初に本作のマイナスポイントをあげると、震災を間近に経験し、リアルを知りすぎていることもあってか、私には違和感のある演出があちこちに見えた。しかしそれを凌駕して、目の前にあるのに気がつけない大切なことやものの存在を映像化することに成功していると思う。二宮和也の嫌味のない芝居は、被災地のボランティアを知っているものなら頷けるものだろうと思う。
『湯を沸かすほどの熱い愛』でもそうだったが、中野量太監督は、ありきたりの日常がかけがえのない宝物であることを知っている。本当に大切なものは、当たり前すぎてわからない、逆に失われて初めてわかる性質のものでもある。
ほのぼのとしてクスッと笑える前半で、自分らしく生きることと自己肯定の価値を、後半で目の前の出来事に寄り添うことの意味を伝える、地味だけど良質な映画だ。
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