「写真を撮りたくなる!」浅田家! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
写真を撮りたくなる!
写真家の浅田政志さんは存じ上げませんが、予告で楽しい家族写真を何枚も見せられ、興味をもって鑑賞してきました。
ストーリーは単純で、前半は写真家になり世に名が知れるまでをおもしろおかしく描きます。予告で見たコスプレ家族写真もここで登場し、なるほどそういうことだったのかと、ほっこりした気持ちで見ることができました。そして後半は、震災にまつわる写真返却ボランティアとして活動するさまを描きます。前半とはうってかわって、震災で家族を失った人たちに向き合う政志の姿が涙を誘います。
かなり味わいの異なる前後半ですが、共通するキーワードは家族です。中でも、鑑賞後に最も強く感じたことは、浅田家の家族の絆です。ほのぼのと温かく家族を見守る父、深い愛で家族を信じ抜く母、口では厳しいことを言いながらも弟を応援し続ける兄、そして準家族的存在として政志を支え続ける若菜。この人たちのおかげで政志は写真家になることができたし、大成することができたのだと思います。また、それを政志もひしひしと感じていたからこそ、震災で家族を失った人たちに精いっぱい寄り添おうとしたのではないかと思います。
そんな浅田政志を二宮和也くんが好演しています。カメラのファインダー越しにさまざまな家族を見つめる目が、とても印象的でした。家族役の平田満さん、風吹ジュンさん、妻夫木聡さんも、自然体の演技が本当の家族のようでした。さらに、黒木華さん、菅田将暉くんが、さすがの演技でがっちりと脇を固め、キャスティングは申し分なしです。
ただ、映画作品としてみた場合、前半の軽いノリから後半のシリアスな展開への切り替えに、なんとなくスッキリしないものを感じました。うまく言えませんが、ギャップの違和感というか、全体としてのまとまりのなさというか、異質なものを繋ぎ合わせたかのような印象です。事実をもとに描いているのだからしかたないかもしれませんが、なんだかあまりにもさらっと流れたような感じがして、こちらの気持ちが追いついていけなかったからかもしれません。とはいえ、心温まる作品であると思うので、興味のあるかたは見て損はないと思います。そして、観ればきっと写真を撮りたくなります!