劇場公開日 2019年4月20日

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「sexist」主戦場 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0sexist

2019年6月8日
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鑑賞方法:映画館

知的

作品を鑑賞して真っ先に思った事は「右派はどうしてそんなに日本を美化するのだろうか?(したいのだろうか?)」という本当に素朴な疑問です。そして更に疑問なのは、美しい日本を訴えているにも関わらず右派が一様に軍隊を持って戦争をしたがっているところです。戦争は人が殺し殺され、侵し侵され、略奪し略奪され、国が廃墟になります。人間は手足がなくなり、頭が吹っ飛び、大火傷を負います。つまり、軍隊や戦争は「美しさ」とは正反対です。特攻隊などを美しく描いた本や映画がありますが、あれは妄想あるいは嘘です。

慰安婦や南京大虐殺がなかったという歴史であれば、これから先に戦争を始めて日本人の身体が吹っ飛びまくっても日本は美しいのか。戦後74年間戦争を一度もしていない日本とはみっともない国なのか。ただ単に彼らは過去の戦争を美化して戦争中は言うほど酷くなかったとして、これから先戦争を簡単にできるようにしたいだけなのだと思います。今作に登場した右派の中で戦争を経験した人間はどれだけいるのでしょうか?

私は戦争がいかに残酷かは分かりますが、慰安婦についての知識が今作を鑑賞するまでほとんどありませんでした。「慰安」とは「心を慰め、労を労うこと。また、そのような事柄」。曖昧な言葉で表現されていますが、慰安婦とは要するに軍人を慰める為にセックスをする女性のことか。言葉が慰めてくれる女性というところもピンとこない理由かも。慰めてくれる、か。

官憲が家に押し入って、人さらいのごとく連れて行ってないから強制連行はなかった(安倍晋三)。彼女達は性奴隷ではなく売春婦だった。監禁されたわけじゃない(ケント・ギルバート)。女性達を無理矢理連れてきた訳でもないし、むしろ彼女達は売春でお金を得て貯金もしていた。彼女達のブローカーは朝鮮人だった。 国際法上の奴隷の定義なんて知らない。元慰安婦が騒ぎすぎてるだけなのだから、日本と日本軍に罪はない。右派の意見をまとめるとこんな感じだと思います。

どこかで聞いた事がある言い草だなあと思ったら、現代の日本女性に対する扱いや発言とそっくりではないですか!娘をレイプした父親が無罪判決になる社会。痴漢が多いから女性専用車両を作らざるを得ない社会。その女性専用車両は男性差別であるとのたまう奴等。派手な服装をしている彼女が悪い、ブスは痴漢されないetc...

「フェミニズムを始めたのはブサイクな人たちなんですよ。ようするに誰にも相手されないような女性。心も汚い、見た目も汚い。こういう人たちなんですよ」作品の中の藤木俊一氏の発言は、驚愕の妄想に満ちていました。彼らの寝底に巣食うのは、女性蔑視と女性に対する一方的な妄想です。この人が女性の外見を上から目線で批評できる側にいると思ってるのも笑ってしまいますが、彼に女性を語る資格はありません。こんな女性蔑視な人なんて、現代女性は絶対に嫌うと思いますよ。

主戦場を鑑賞して一番に思った事は、あらゆる差別の根本に女性差別があるということです。そしてハルモニだけではなく、あらゆる国で差別に対して声を上げている女性を支持しない理由は私にはありません。

最後に、どうして杉田水脈みたいなレイシストが増えてきたのでしょう。もちろん、戦争体験者が居なくなってきている事も要因の一つだと思います。しかし、日本が経済的にも社会的にも余裕をなくし、その一つの現象として炭鉱のカナリアさながら、レイシストが増えてきていることも考えられるのではないでしょうか。また、セクシストに男性が多いのは男性が女性を脅威だと感じているからなのではないでしょうか。経済的に落ち目の日本ですが、それよりもレイシストやセクシストが主張していることを聞いている時の方が日本の凋落を強く感じてしまいます。しかも日本のトップはネトウヨです。世界は変化してきているのに日本の取り残され感がハンパなくて、それに他文化や他者を理解しようとせずにいるところ、国連の人権理事会から人権状況を勧告されるまでに落ちぶれてしまったところ、私はそれが凄く悲しいです。

ミカ
talismanさんのコメント
2022年3月20日

来月からイメージフォーラムで再上演するとのこと。見ます。

talisman