「もう一歩かな」主戦場 ひ___さんの映画レビュー(感想・評価)
もう一歩かな
議論のとっかかりとしては悪くないと思いました。
ただ膨大な情報量に対して、やはり約2時間という時間が足りない。
その結論はちょっと拙速じゃないの?というツッコミどころも
数多くありましたので、
ぜひ6時間くらいかけて、
要所要所で映像を止めながら、この映画を検証する
そんな討論番組を作っていただきたいと思いました。
この映画を踏まえた上で
出演者した皆さんもいろいろ言いたいことがあると思いますので…
個人の作った映画ですので
多少右や左に寄ってしまうのはしょうがないかもしれませんが、
比較的バランスは取れているのではないでしょうか。
内容的には日本人にも韓国人にもアメリカ人にも耳の痛い話が入っていてよかったです。
驚いたことに観客の半分は外人でした。アメリカ人に見せたくて作った映画なのかな、という感じです。
思ったこととして
・何が本当で何が後から作られた嘘なのかがはっきりしないと態度を決められないので、それぞれの項目についてもうちょっと深く調べてみたいという気にさせてもらいました。
・日韓請求権協定 以外の政府や個人が元慰安婦に支出した補償について一切触れられていなかったように思ったが気のせいかな
・前半での元慰安婦へのインタビューの時にセンチメンタルなBGMが流れて逆に安っぽさや偏向を感じました。
・最近の徴用工もそうですが、子孫とか親類とかが補償を請求してネズミ講的に広がり、ハードルを上げていくのは意味不明です。日本人収容所に対するアメリカの謝罪を引き合いに出してましたが、アメリカは親類縁者まで補償したのでしょうか。
・挺対協が出てきましたが、北朝鮮の話が一切出てこなかったのは意外でした。極東アジアの力学を語るのに大変な片手落ちではないかな?日韓の和解は困るのでわざわざハードルを上げたり、ゴールを動かしている人たちの話にあえて触れていないですね。中高生に行われている反日教育の話にも触れていないですね。なにか意図があるのでしょうか。日本対中国のフレームワークに持ち込みたいのかな
・朝鮮戦争の時の慰安所を日本の将兵が作ったというのは間違いだと思います。太平洋戦争は終わっていたのだから、元日本兵だったかもしれないけど韓国人が作った、ということになるかと。韓国人へのインタビューで「帝国の慰安婦」の内容は吐き気がして読めなかった、とか…日本側の恥部への切り込みは核心に触れる鋭いものでしたが、まだまだ韓国側への切り込みは甘い内容だと思いました。
・慰安婦像を普遍的な「平和の像」にしたいのなら、日本軍とか20万人とか、特定の団体や根拠不明なデータの碑文をつけることに疑問を感じます。彼女らは近代の朝鮮半島における貧困、女性の人権レベルの低さ、家長家族制度の被害者でもあり、碑文をつけるならそれも含めるべきです。今でも発展途上国ではありうる話だと思いますので。あと韓国側にも反省する力があるならサンフランシスコの3人の慰安婦像を4人にして一人はベトナム人にすべきかと。碑文にも記載すべきです。日本人が怒っているのは戦時女性への暴力被害反対のコンセプトでなく、碑文が不正確で一方的だからです。
・靖国参拝とアメリカ大統領によるアーリントン墓地参拝の違いがこじつけに感じました。あとの改憲までの論理展開が強引すぎかと、おかげさまで改憲支持者の話も聞いてみたくなりました。
・靖国のことを語るなら合祀のことも慰安婦問題と関連して切り込んでもらいたかったです。
・右派の人たちの不適切な発言を編集であえて切り取って際立たせている感じがしました。唐突に彼らがあのようなことを言うとは考えにくいので、インタビュアーが相当、鎌をかけた、つまり、あおったのでしょうか。一学生が卒業制作の映像だと言ってインタビューしたらしいので、公開されると知っていたら、もっと責任ある発言をしたでしょうね。勝手に公開された人たちは気の毒かな。韓国でインタビューするときにも一学生の卒業制作と言ったのでしょうか。
・といっても、韓国側の誤謬にもある程度深く切り込んでいただいたことで、慰安婦問題に対する理解が一気に深くなりました。ただ一つ一つの資料に対する結論が拙速すぎるので、さらにそれぞれの資料に対しての検証を行う必要性を感じました。このままで終わってはいけない問題だと思います。
・議論のとっかかりとしては、立場にかかわらず見る価値のある作品であるとは思いました。そもそもこれまでこういう、議論のとっかかりとなるプラットフォームさえ、なかったのだと思いますので。せっかく始まった議論の場ですから大事にしていただいて、
次はこの映画の内容に思うところある人たちが、その誤謬と思われるところをを突く番かと。
まあ、そんなところでしょうか。なかなか最後まで楽しませてもらいました。上映後外人がしきりに拍手してましたが、そんなんでいいんかい、まあ、当事者じゃないからな、と感じました。