「歪ながら崩れていく己の正義感、救われるラスト」アンダー・ユア・ベッド(2019) たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
歪ながら崩れていく己の正義感、救われるラスト
アマゾン曰く「R-18+版」で鑑賞。たまたまアマゾンでレンタルした『よこがお』に続いて観たが、まさか新文芸坐でこの興行をしていたらしい。ラッキー。ってことでここから本題。少しネタバレ気味になるかも。
率直な感想として、この痛みを良く乗り切ってくれたというのが大きい。R-18+なのである程度の覚悟はしていたが、ほぼ拷問みたいなシーンばかりで容赦がない。西川可奈子のフルヌードにはアザが痛々しく入り、もはや人間の狂気とは思えないほどの描写が続く。そこに入り込む三井も歪んでいるはずなのに、何故か不思議と善人に見えてしまう。そしてそれだけの説得力で救ってくれたのはこの上ない余韻へと繋がる。序盤から不穏で気味悪い世界に支配され、その痛みを耐え抜いただけの光明があって良かったと思う。
また、三井を演じる高良健吾も圧巻。彼はあくまで名前を呼ばれただけの人…それなのに彼女に依存するという役どころ。落ち着いた声で入る回想は一層彼の孤独を引き立たせる。その中で見つけた、僅かな光を手繰り寄せていく。常軌を逸した行為を何度も正当化しながら近づく様は猟奇的であり、歪なヒーロー像を打ち立てる。2人の奇妙なダンスを観ているような心模様は何故だろう、優しくみえる。
そんな世界を作り上げた安里麻里監督だが、原作があるとはいえ、このビジュアルを描けてしまう才能と異端ぶりにただ驚く。ドラマ「ただ離婚してないだけ」もそうなのだが、画以上に人の壊れていく感情の様を描くのが上手い。説得力が付随するので引き込まれてしまう。そうした阿吽があってこその作品なのだとつくづく思った。
最後まで緊張の糸を巡らせながら、その世界の行方をくらます脚本。そして開かれた新しき世界。結構ドシッとくるものがあった。ドラマも最終回目前、こちらもますます楽しみになった。