「化ける予感」アンダー・ユア・ベッド(2019) 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
化ける予感
氷菓を見たとき「おや」と思った。
この映画が原作の面白さに依存しているのは解る。
また、かの京アニの厖大な仕事をそのまま絵コンテにしているのも解る。
ただし、個人的に、映画は面白かった。
山崎賢人マイナスがあったけれど、本郷奏多プラスがそれを覆い隠していたし、氷菓は、個人的に傑作だった。
その根本的な理由は、安里麻里のホラーテイストにあったと思う。
この意外なB級出身監督の才能は暗澹の空気づくりであろうかと思う。
もとよりホラー色がない氷菓の謎解きが、中村義洋の残穢を思わせる暗い雰囲気のなかで語られる。千反田家の暗い陰影など殆ど犬神家のように見えた。その暗さが、類型的な学園ものにおちいるのをふせぎ、かつホラー映画の演出的間合いによって、萌えを提供するはずの「わたし気になります」さえ呪詛のごとくに聞こえた。
安里麻里は日本映画界でここのところぜんぜん生まれてこなかった「面白い映画をつくれる監督」ではなかろうか。この映画はそれを裏付けるものがあった。高良健吾ゆえにキモさがまったく無いのに加えて暴力夫との対比でほぼ彼が正義に見える。ありがちなストーカー話だが、人称の変わるナレーション、バイノーラル風な録音、マンデリン・・・それらが暗澹の空気感のなかで語られることで尺を乗り切る楽しさがあった。
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