「異常な執着か?一途な愛か?」アンダー・ユア・ベッド(2019) mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
異常な執着か?一途な愛か?
江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』、『人間椅子』などをも彷彿とさせる、他人の生活をこっそり覗き見るという古典的なストーリー。
親からも他人からも存在を無視続けられた孤独な青年三井が、クラスメイトの千尋から、初めて自分の名前を呼ばれたことに、この上ない「幸せ」を感じます。そして、たった一度だけ、喫茶店で千尋とコーヒーを飲んだときのことが忘れられません。
11年の月日が流れ、三井は千尋に再び会うことを夢見て、興信所を使って彼女の現在を突き止めます。近所に引越をして、合い鍵を使って留守の時に彼女の家に入り込み、さらには夫婦の寝室のベッドの下に潜り込み・・・と、三井の行動は暴走していきます。
三井のやっていることは、ストーカーなのですが、決して害を与えるものではなく、「ただそばにいたい」という切実な想い。偏愛執着なのか純愛なのかと、考えさせられてしまいます。千尋が夫からひどい陵辱を受けるたびに、不思議と三井の切ない想いがじわじわと伝わってきて、千尋の救世主のようにも思えてきます。
テイストは全然違うのですが、内容的には『君が君で君だ』のシリアス文学編かもしれません。笑
R-18版とR15版があるらしく、R-18版の方を動画サイトのレンタルで見ました。どこがどう違うのか? おそらく、ボカシがあるかないかの違いかもしれません。
wowowの連続ドラマ『罪と罰』(ドフトエフスキー原作)で主人公を演じた高良健吾が、恐ろしいほど印象に残っており、内面に秘めたものが炸裂しそうな何かを抱えており、この『アンダー・ユア・ベッド』でも、好演でした。
ストーカー変態ということに着眼すれば、六角精児さんのような人がぴったりかもしれませんが(NHKのドラマ『真夜中のパン屋さん』で通行人を望遠鏡でのぞき見する役だった)、高良健吾だからこそ、純愛につながる淡いタッチになったのかもしれません。