劇場公開日 2019年4月12日

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「メロメロ」殺人鬼を飼う女 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0メロメロ

2019年4月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

男や家族への恨みを密かに持ちつつ孤独に生活するキョウコが初めて他者と関わった時に始まる変化。

ひとえに解離性同一性障害といっても色々あるのか。
主人格と副人格たちが深く人間関係を構築している様子が面白かった。
多重人格というか、心の中で友達を作っていたら彼女たちが独立して友好的に身体を使い合うようになったと思える。
勝手に身体を使われて好き勝手やられるのは困るけど、私の持つ脳内人物も独立して欲しいし、ちょっとキョウコが羨ましくなった。

ストーリー自体の面白さはあまり感じられず。
山場を見失ったまま終了してしまった。
人を殺すにしても愛するにしても、動機が単純すぎて理不尽さや欲望があまり見えない。
心の底にあった嫌悪や怨みを体現化したものなんだろうけど、恐怖感や感情移入が足りない。

田島とのロマンスにもう少し深みが欲しかった。
店長のナチュラルなキモさほんと好き。
殺すならこっちじゃない、何放置してんの。
典型的というか何というか、ケバい母親のあの感じはもはやいっそ哀れ。
ああいう言動ってわざとじゃないと出来ないと思う。どう生きてきたらあんな滅茶苦茶できるんだろう。面白い人。

副人格たちの言動が面白くて飽きない。
直美が一番好き。強気な言動も強引な行為もなんだかかっこいい。
母親の性格をだいぶ引き継いだゆかりとのやり取りが小気味好い。
幼いハルも可愛い。ベランダのシーンは地味に好き。

ロマンポルノリブート作品なのかと思うくらい濡れ場が多い。
わざとらしすぎる声と過剰な効果音は無い方がエロくて不気味で胸に刺さるのに。引き算大事。
最後の濡れ場はエキセントリックで良かった。
見せ方も良いし絡み合う人達のビジュアルも圧巻で好き。それまでのポルノ的な表現ではなく、映画的な表現へ昇華してくれたことが嬉しい。
四人と田島の関係の集大成として良いシーンだった。

キョウコの働くビストロにBGMが一切かかっていないことや、一人暮らしの部屋がわりと高そうなことにチクチクした違和感があった。

KinA