劇場公開日 2019年3月29日

「時代を味方につけた個性光る良作」鬼滅の刃 兄妹の絆 ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0時代を味方につけた個性光る良作

2020年10月22日
iPhoneアプリから投稿

アンチミーハーを謳う自分にとって、これだけ流行ってる作品を見るのは鬼門でした。
人気が出れば出るほど見たくなくなる、そういう性分なのです。

それでもどうしても見てほしいと絆され鑑賞。
ジャンプらしい王道展開だけだったらきっと好きじゃないだろうと、そう高を括っていました。

でも開始10分で引き付けられるものがありました。時代感のある丁寧な背景美術、その中で繰り広げられる兄妹の絆の物語。

古典的な王道ストーリーながら、その中には少年漫画とは思えないシリアスなドラマが内包されていました。それらを表現するアニメーションも非常にクオリティが高く、これを地上波でやっていたのかと思うと驚かされます。

特に高感度が上がったのは、主人公が最初から"強くない"という点。きっちりと努力して成長していく様を丁寧に描いているのでスムーズに感情移入することが出来ました。
敵キャラクターの内面も描いているので、勧善懲悪でないのも良いですね。単純なカタルシスだけでなく、骨太の人間ドラマも丁寧にフォローされています。この辺りも人気の秘密でしょう。

個人的にノイズになったのはやたらと"モノローグが多い"という点。アクションのテンポを阻害しているだけでなく、映像で語れるシーンにわざわざモノローグを当てるというのはスマートさに欠けているように感じました。この辺は原作再現に徹した故の弊害かもしれないです。それと少年漫画らしいギャグ要素も苦手。気になったのはそれくらいです。
こればかりは完全に好みの問題ですね。

兄妹の絆を中核にした王道展開。
成長ドラマに内包された奥深いストーリー。
万人受けするキャッチーさと大人の鑑賞にも耐える射程を備えた本作、コロナ禍の洋画不足も追い風になって大ヒットも納得の内容でした。

困窮する映画業界の救世主として今後にも期待しています。

ジョイ☮ JOY86式。