カニバ パリ人肉事件38年目の真実のレビュー・感想・評価
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兄弟愛
どうやら私は顔で人物像を把握することが得意ではないらしい。映画を見るときは、登場するどの人が誰かを確証がないまま推測を重ねて物語についていかなければならない。最近になってそれはある意味ハンディキャップではないかと思うようになった。そういう視点でこの作品はとてもわかりにくい。見えない、わからない。なかなか関係性が把握できない。それを狙っているにしても不親切さに腹が立つほどにわからない。題材はものすごくいいのに、見たいものが沢山あるのに、見えなくて歯がゆくて仕方がなかった。
それでも、横で喋っている男性が佐川一政氏の弟の純氏なのだとわかった瞬間は混沌の中に光が見えた。純氏の自傷シーンは比較的よく見えたので衝撃的だった。一政氏にどう思ったと聞くところはまるで恋人に甘えているような印象を持った。あんなに歳をとっても逃れられないものがあるのだと思った。
本人の話も詳しく知らないまま見たので、のっけから一人ぼそぼそ話され...
本人の話も詳しく知らないまま見たので、のっけから一人ぼそぼそ話されても何のこっちゃとなる。
漫画の部分で何が起きたか理解できる!と期待したものの、画面は相変わらずぼやけてて読めない。
2500円もする漫画買わせるためにわざとかと、勘ぐっちゃいますね。
一政の理解できぬまま、兄弟の性癖暴露されてもなぁ...
有刺鉄線とか最初何してんのか意味不明でした。
そして最後のメイド服での介護。
メイドがながながとゾンビの話してるけど、一政に理解できるわけないやんと思いながら自分は一生懸命聴いてたら、途中でブツッと切られるし、最後までため息だらけの作品。
席立ちたくなった映画no.1です!
血脈なのか原体験なのか
徹底的に顔に終始し、ピンの合わないカメラ。不快な咀嚼音や「これが人を食べた口だ」といわんばかりの口元に終始したカメラワークに辟易。
人間の欲求は説明しようとすればするほど、朦朧としてつかみ所のないものだと言いたいのかもしれないが、そこが狙いすぎ。
徹底的な顔のアップが功を奏したのは、仰向けになった佐川と目があったとき。
それまで枠外に目を向けていた佐川が、カメラを直視する。
人を食べた人という先入観があるからか、つい目を背けた自分がいた。
驚くのは弟の性癖が明らかになったとき。
「ほかにも同じような症例があるかもしれない」と冷静に自分を分析する弟。これは血のなせるわざと片づけていいのだろうか。
それとも佐川の幼い頃に人肉への憧憬を抱かせてしまった叔父の怖い話を、弟も一緒に聞いていて刷り込まれてしまったのか(Wikipedia参照)。
裕福な家庭での仲むつまじい幼い頃の二人の姿には、将来人肉への強い欲求を覚えてしまうようにはとても見えない。
しかし息子たちが注射をされている姿を、わざわざホームビデオにおさめる行動からして、親もそのけがあったのかもしれない。
一体人はいつ欲求を抑えられなくなってしまうのだろうか。
「かぶりつきたいほど可愛い」という表現がある位なので、愛しいものを食べたい噛みたいという欲求は本能に備わっているものなのだろう。
弟のいうように合理的な手段で欲求を発散していれば、殺人にいたることはなかったのかもしれない。
それにしても、勇気を振り絞って性癖を告白したのに淡白な反応にがっかりしたり、兄の描いた漫画に「こんなものを出版したら兄の評価が落ちる」などと憤る弟の姿に、妙ないじましさを感じたり。
しかし全体的に内容が希薄。
佐川の口から語られることは多くなく、映画館でみるほどの作品ではなかった。
というか、配給があのTOCANAだって。一番の驚きはそこ。
文字通り『 “人を食った”ような話』
監督は外国人なのだが、この日本語の慣用句を知っていたのだろうか?もし存じ上げていたのならば、相当シャレの分るクールな人達かもしれない。それ程、このドキュメンタリーは大変好戦的なプロットに溢れている。意外性が突然放り込まれることや、顔のアップの多用、そしてわざとピントを暈かす撮影手法、あくまでも主人公の喋るタイミングを待ち続ける事での長い長いロングカット。特に前半の弛緩は、その異様な事件にも拘わらず一体何を訴えたいのか皆目検討もつかないと思考も諦めかけ、そして淡い眠気が襲ってくる頃、場面転換での唐突のストーリー展開で、益々作品に翻弄され、正にジェットコースターそのものである。勿論不快と思うところもあるのだが、ファイーストインプレッションが激しい程、そのよりもどしというか、カウンターとして何故だか穏やかさも徐々に訪れる、凪と時化を繰り返される構成なのである。
こういう作品なので、細かい説明や解説はない。テレビのドキュメンタリーとは違い、アート作品に傾倒しているイメージだ。思いつきや突拍子もないアイデア等もふんだんに入れ込まれているらしい。ネットで検索してみると、主人公と以前にAVとして共演していた女優さんを作品後半に、介護のようなイメージで出演させた際に、何故だか。女優がメイド服を着ていた理由は、ピンク映画でその女優が衣装として着ていたことを鑑賞してのアイデアとのこと。誠に侮れない、小馬鹿にしたような内容に、そのウィットさを却って面白がる自分もいたりする。主人公弟の鉄条網での衝撃の性癖や、事件の詳細を描いた自作漫画、出演AV、それ以上に驚く、幼い時分の鮮明な家庭用フィルムでの映像。そのどれもが想像する斜め上からの虚を突かれたアプローチに、ビックリする程の心地良さを抱いたのも事実である。異常性欲でありサイコパスである主人公の希有な現在をそのままカメラに収めたい、この稀代の人物をアーカイブ化したいという制作陣の欲求も又、強く惹き付けられるところだ。それは決して解き明かされることのない人間の深淵という謎を、それでも突き止めたいと思う純粋な“欲望”なのであろう。人を殺してそれを食し、そして幸運にも刑を科されずに社会に存在しているこの人物を、社会はどう向き合うのか、そんな感傷を吹き飛ばす痛快さも魅力である。
何を見せられた?愛を見せられた?
パリ人肉事件について、この映画を知るまで知らず、付け焼き刃な浅い知識で鑑賞しました。人を食べるひとはどんな気持ちなんだろうと。
人食についての善悪はひとまず置いていて...
人間一人が、一生のうちに使うエネルギー量は決まっているとして。
エネルギーを使い果たして、とっくに欲を満たして桃源郷に行ってしまった兄と、(犯罪を犯さないという意味で)真っ当に生きてるおかげで、欲を満たされきれない弟と?
だったら、もしかして、兄の方が幸せなのかな、って思っちゃいました。
三半規管に情け容赦ないカメラワークのなかで、ちゃんと二人にピントがあってたの、幼少期の動画だけだったような気がして。
お互いが、どこでどういう選択をしたせいで、二人一緒にピントが合わせられないような人生になったのか。うーん、めちゃくちゃ興味深い。
佐川兄は、好きだったから、女を食べたとおもって良いんでしょうか。そんな兄に、「自分を食べることは考えなかったか」と聞いた弟は。
まさか、人肉事件のドキュメンタリーで、こんな強烈な兄弟愛に触れるとは思わなかった。
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