「寡黙で真面目な男の、必殺復讐劇はリーアムの真骨頂」スノー・ロワイヤル Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
寡黙で真面目な男の、必殺復讐劇はリーアムの真骨頂
リーアム・ニーソン(66歳)主演作品。いくつになっても、こういう面白い作品が舞い込んでくる背景には、愚直なまでの仕事に対する姿勢と努力があるのだろう。
41歳のときの「シンドラーのリスト」(1993)で世界的スターになった遅咲きのプロフェッショナルは、いまでも毎年5本~6本はあたりまえのように、"求められれば"、世界中のどんな端役でも、完ぺきにこなす俳優だ。この仕事量はハンパない。
「スター・ウォーズ」のプリクエル・トリロジー(ep1-ep3)への再評価の気運が高まっている昨今、「ファントム・メナス」(1999)の主演"クワイ=ガン・ジン"を演じたリーアムももっと評価されていいはずだ。
さて本作は、犯罪組織に殺された息子の復讐を誓う父親・・・次々と悪人退治。
なんとなくリュック・ベッソン製作で、同じリーアム主演の「96時間」シリーズ(2008/2014/2018)が頭をよぎるが、たとえ"頑張るパパ"設定の類似だとしても、その上をいく不思議な魅力のあるエンターテイメント性がある。
本作にはオリジナルがあって、ノルウェー・スウェーデン・ベルギー製作の「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」(2014/Kraftidioten)のハンス・ペテル・モランド監督自身によるハリウッドリメイクだ。
雪深く閉ざされた田舎町キーホーで、毎日、除雪作業をしている主人公ネルズ・コックスマン(リーアム・ニーソン)。寡黙で真面目なネルズは、その長年の貢献が評価され、"模範市民賞"を受けるほどだ。
そんなある日、空港で働く一人息子が、麻薬の過剰摂取に偽装されて殺されてしまう。警察から連絡を受けたネルズは、"息子は麻薬に手を出さない!!"と怒りに燃える。
原題は、"Cold Pursuit=冷たい追撃(追跡)"。素手やライフル、除雪車を使った"一人一殺"は、殺人事件に縁がなさそうな、"雪に閉ざされた静かな町"で、まるで必殺仕事人のようで痛快だ。
人里離れた町だから気付かれない側面と、寡黙で真面目な男のルーティーンのような仕事っぷりが魅力。
ひとり殺すたびに、その相手の名前とニックネームが十字架とともにクレジットされる。殺しても構わない、悪者たちへの勧善懲悪は、殺人が正当化されてユーモラスに見える。
さらに本作にはヒネリがある。仲間を殺された麻薬組織バイキングは、それを敵対組織によるものと勘違い。敵対組織のボスの"息子"を襲撃してしまう。それぞれの"息子"の復讐劇が、この事件を追いかける警察をも巻き込んで、三つ巴(どもえ)、四つ巴と大きくなっていく。
派手なアクションや、アッと驚くVFXがなくても、グイグイと引き込む展開は、ある意味オーソドックスでありながら、リーアム・ニーソンの存在感を引き立てている。
(2019/6/7/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/字幕:松崎広幸)