劇場公開日 2020年9月11日

「愛すると愛されるは似て非なるもの」窮鼠はチーズの夢を見る 映画野郎officialさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5愛すると愛されるは似て非なるもの

2020年10月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

愛されるより愛したいマジで。

「片思い」は一方通行で「愛し合う」とは双方向だと思いがちだが、「愛する」と「愛される」のバランスは常に変化し、その想いの大きさが幸せに直結する。

自分から愛すことから逃げ人から愛されることを利用する男と、一途に愛し続ける男の出会いにより、愛のかたちを摸索しつづける物語。

食わず嫌いだったBLの話も、深い愛をテーマにしていて、濃厚で大人な映画に仕上がっていた。これが行定勲監督の演出力か。

男と男の同性愛(BL)とジャンル分けしてしまったが、昨今映画賞においても「男優賞・女優賞」と区別することがナンセンスで、この多様化の時代「俳優賞」とひとつにした方が良いという議論がある。それはそれで確かに大切なことだが、生物界にオスとメスがいるように、男と女という生態は存在しているわけだから、男は男で女は女と同じように、LもGもBもTもいるということで良いのではないだろうか。(そういう意味では、よくある「その他」も失礼で、それぞれに賞を設けるか一括りにするかだとは思うが)

ぼくはなんと言われようと女が好きだし、それは本能的なものだから揺るぎない事実である。それぞれの主観がすべてで、コンプライアンスを押し付けるのではなく、その議論自体がもっと寛容であるべきだと感じる。

正直最後は少し気持ち悪くなってしまうほどのラブシーンだったが、それも生理的なものだから仕方がない。ただそれほどまで身体を張った主演ふたりの絡みは見応えがある。

成田凌は本当にいい役者になっている。哀愁漂う微妙な心情変化を絶妙に表情だけで伝える。テーマが合わなくても、その演技を観るだけで価値のある映画だ。

もの語りたがり屋