「監督の力量不足」燃えよ剣 じゅんちさんの映画レビュー(感想・評価)
監督の力量不足
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楽しみにしていたのにがっかり。
関ヶ原の時もそうだったが、原田監督は司馬遼太郎の原作を読み込めていない。
原作の言い回しを使えば原作通りにやったと思ってないかな。
もとより150分にこの長編小説を全て表現しきるのは不可能なのはわかっている。
多少のオリジナル要素や改変は致し方ないが、残すべきシーンや設定をいじくりカットし、余計な設定を盛り込むのは×。
燃えよ剣で描くべきは、相容れない美学同士のせめぎ合いだ。
国家レベルで考えた時それは尊王攘夷や公武合体であり、個人レベルに落とした時は詰まるところ土方と七里の因縁争いになる。
そこから言えば七里の役回りはそうじゃないし、あの二人の因縁は最後には切られるからこそ相容れない美学、そして時には通じ合う交歓がせめぎ合うのだ。
お雪もそう。
お雪は戦いの場に持ってきてはならないヒロインであるからこそ、『知らねば迷わぬ恋心』なのだ。
お雪のいる戦いのない暮らしと、滅びるしかない幕府に節義を通し戦い切る人生。
迷いもなく後者を選ぶように見える歳三の迷いを描いてこそなのに。
油小路の決闘もそう。
土方は彼の作品である新撰組を崩壊寸前にした伊東を「殺したいほど憎む」。
だからこそ敵将の遺体を囮に誘い出すと言うおよそ士道のかけらもない謀略に出られるのだ。
関ヶ原に続いてがっかり。
役者も演技もいいのに、これはもう監督脚本に司馬遼太郎を映画に起こす力が足りないと言わざるを得ない。
よかったシーンももちろんあったが、作品のテーマを表現しきれていない。
岡田くんはじめ役者の演技はほんとうによかったのでお情けで2点をつけたが、原作小説燃えよ剣のファンとしては0点をつけたくなる作品だった。
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