「教科書」燃えよ剣 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
教科書
昨年5月公開予定から延期してはや1年5ヶ月。少しずつコロナも収まり、タイミング的にはジャストなタイミングでの公開。ただ、初日の夕方の客入りが大スクリーンの3分の1というのが何とも言えない…
大まかにバラガキ時代から新選組結成、そして大政奉還後の最後の戦いまでを全て描きます。148分に本当に詰め込めるのか?という疑問を抱えながらも鑑賞。
まず良いところを挙げていきます。
役者陣の剣術に武術のクオリティはとても高かったです。狭い小屋の中で繰り広げられる血みどろの戦闘はるろ剣とまではいきませんが、狭さを活かしており良かったです。ちゃんと斬撃の音もしっかりしてますし、乱戦の様子も群像劇のように描かれておりリアルでした。
次に登場人物の描き方です。差異はありますが、沖田総司の愛嬌の良さだったり、美少年感は山田涼介さんにピッタリハマっていました。藤堂平助や山崎烝ははんにゃ金田さんや、ウーマン村本さんが演じられており、違和感なく観れて、ハマり役だったと思います。山崎のイメージは銀魂で固まっていたのですが、今作だと優秀な潜入捜査官として描かれており、こういう人物なんだなと知れたのが今作の功績です。一橋慶喜の頼りなさも山田裕貴さんの喋りのお陰で深みを増しています。土方も勇ましさの部分が強く描かれており、圧倒的強者感が素晴らしいです。お雪さんの愛らしさも魅力的です。
風景の作りもとてもうまかったです。定番の幕末の景色のみならず、広大な自然、教科書でも一度は見た建造物、他にも精巧に作られた建物もあり、世界観に違和感なく浸ることができました。
ここからイマイチだった点です。
一部の登場人物の描き方が曖昧でした。近藤勇も目立った活躍がないために、何故ここまで讃えられているのかが映画の中では分かりませんでした。芹沢鴨も登場から死ぬまでのくだりがほぼ描かれず、突然切り込まれて死んだ様にしか見えなかったです。そこまでの描き方がこの尺では非現実的だったんだろうなとは思いましたが、どうしても拭えない違和感が心残りです。
全体的に思ったのは教科書通りだなと思ったことです。意外性が全くを持ってないです。自分は幕末の時代の本を読むのが好きなので、山崎の描き方以外は大体どこかで見たものでした。もっと土方の意外な人間性や、深掘りされた新選組、劇中でもちょろっと触れられていた新選組内部の崩壊ももっと観てみたかったです。後半になっていくごとに駆け足になり、近藤や沖田の死に際もナレーションで済まされて、土方の死も感動できるはずのものなのに特に何の感情も抱きませんでした。ただ運ばれる様子からエンドロールに繋げられても…
かなり楽しみにしていただけなのに微妙な完成度になってしまったのは悔しいものです。戦闘描写に関してはしっかりしているのでそこに注目すれば面白い作品だろうなと思います。
鑑賞日 10/15
鑑賞時間 17:20〜20:00
座席 Q-26