「愚かな人間を描ききった極北の傑作」人間の時間 エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
愚かな人間を描ききった極北の傑作
社会や人間に対する絶望があった。
もとは軍艦であったクルーズ船が旅行客を乗せ航海に出た。閉ざされた空間での暴力。いきなりヒロインの藤井美菜が犯されまくるし、恋人のオタギリジョーは逝ってしまうし、常識を覆す展開に。
一夜明けたら船は未知の空間にいた。そこから逃れる術はない。国会議員とヤクザによる独裁。限られた食糧の不公平な分配、暴力による弾圧、そして殺戮。食糧がなくなれば人の肉を食らう。
とことんハードな内容だが、思えばすべて人間がやってきたこと。特別なことは何ひとつない。
人類の悲劇の歴史をデフォルメしたような今作。実にインモラルで観る人を選ぶが、愚かな人間を描ききった極北の傑作だ。
今年の外国映画のベストの一本だろう。
コメントする
gachonさんのコメント
2020年12月14日
キム・ギドク監督が欧州でコロナで逝っちゃったよーーーーこのカオスの世界を描けるのはギドク監督だけなのに、遺作がこの作品なのはあまりにも暗示すぎるような気もするが。福島を描いたSTOPも限界を越えていたように思う。これから人類はどのように生きていけばいいのか?エロくそさん、梁山泊を作る時が来たようですね。