「花火のように心が弾ける」サイダーのように言葉が湧き上がる かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
花火のように心が弾ける
アニメ業界では知られていた実力者、イシグロキョウヘイの映画初監督作品
【ストーリー】
夏休みのある夜。
郊外の小田原市のショッピングモール。
そこで二人は出会う。
一人は、スマホでかわいいものをライブ配信する人気のインフルエンサー女子・スマイル。
もう一人は、だれも読まない俳句をSNSで発信する男子・チェリー。
おなじケースを使っていた二人のスマホが、イベントや万引きの騒ぎの中でいれ代わってしまった。
「スマホがないと死ぬ!」
となげくスマイルに、姉のジュリは自分のスマホをさし出して、しれっと言う。
「連絡取ればいいじゃない」
一方のチェリーも、モールの屋上に作った秘密基地で、スマイルのスマホをもてあましていた。
そこにかかってくる通話。
二人の言葉がつながり、心が近づく夏がはじまる。
南国を思わせるビビッドな色彩。
アクション派手めですが演出は丁寧で、ストーリー展開も邦画を思わせる堅実さ。
ミステリ作品としても、謎の提示と伏線の回収は非常に巧く作られています。
みずみずしく軽やかで、夏の青春アニメとしてとても素敵な作品です。
ただ残念なのは、クライマックスの没入感の抜けと、タイトルの"サイダー"と"言葉"の存在感のなさ。
あそこで全員を号泣させるストーリーのクライマックスと演出を実現できれば、傑作でした。
なんだろう、二人に一語ずつ大切な言葉を与えればよかったかも。
まあ面白かったからこその、作品を語りたい欲求をかき立てられるわけです。
それとヒロインの前歯女子、かわいいのでもっと流行れ。
アメリカ人が八重歯前歯がどれほど嫌いでも、そんな風潮に迎合せずに日本独自の価値観を発信してほしいと思ってます。
だってかわいいでしょ。