「序盤はやや盛り上がりにかけますが、後半になるにつれて良い感じに」サイダーのように言葉が湧き上がる こーさんの映画レビュー(感想・評価)
序盤はやや盛り上がりにかけますが、後半になるにつれて良い感じに
引っ込み思案な少年・チェリーと、見た目の一部にコンプレックスを抱える少女・スマイルが、ふとしたきっかけで接点を持ちます。
序盤では、ややこの物語の方向性が見えづらく、少々退屈でさえありました。中盤になってから、チェリーのバイト先の知り合いの老人がずっと探していたレコードを探し出す、ということをチェリーとスマイルが決めてから、物語が動き出します。
この『サイダーのように~』は、良い素材の扱い方・物語のまとめ方をしているように思えました。
①田舎という舞台設定の使い方
ショッピングモールが出会いの場であり、二人の活動の場として描かれていますが、こうした大型モールは、田舎にいかにもありそうな感じで、この物語の舞台がリアリティを持って感じることが出来ました。また、こうした田舎の街でありながら、ネットを活用して動画主として活躍するスマイルは、ネット社会では必ずしも都会でなくても出来ることがある、ということを上手く描いています。
②周囲の人物たちの関わり方
2人の主人公の周りには、色々な人たちがいます。タフボーイやビーバーという、個性的な名前を持った、個性的なキャラクター達、、、それから、バイト先の大人たち、などなど。
スマイルが物語の最後、引っ越していくチェリーに、探し当てたレコードを聴かせたい、と考え動いている中、これらの登場人物たちは、色々な形で協力し、それがクライマックスを盛り上げています。決してただの傍観者ではない登場人物たちに好感が持てます。
③主人公の成長
俳句の形でしか気持ちを表現できないチェリーは、最後、自分の気持ちをのせて、スマイルの前で俳句を詠みあげます。気持ちが高ぶっていき、最後は、俳句というより自分のストレートな気持ちを叫ぶ、といった感じになります。人に気持ちを伝えることが出来る、という成長です。
これを受けて、スマイルは、コンプレックスの歯を隠していたマスクを外し、チェリーと向き合います。外見のコンプレックスを克服し、ありのままの自分を相手にさらけ出すという気持ちに吹っ切れたように見えます。
余り期待せずに観にいきましたが、予想よりも面白かったです。