「チェリーに違和感」サイダーのように言葉が湧き上がる おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
チェリーに違和感
昨年から気にはなっていたものの、ずっと延期されていた本作。やっと公開というとこでさっそく鑑賞してきました。夏が舞台の本作、今の時期にぴったりなほのぼの青春ラブストーリーで、鈴木英人さんを思わせるポップな絵柄とあいまって、なかなかおもしろかったです。
物語は、人付き合いが苦手な田舎の少年が、偶然出会った少女と、互いに惹かれ合い、それぞれの持つコンプレックスを乗り越えていくというもの。典型的なボーイミーツガールものですが、青春の甘酸っぱいラブストーリーと同時に、それぞれが人として一回り大きく成長していくさまを描いていることに好感がもてます。そこに、ある老人の思い出のレコードのエピソードを絡め、そのレコードタイトルが大きな意味を持っているところが心憎いです。
そんな感じで、着想は悪くないのですが、作品世界に浸るまでに少々時間がかかりました。というのも、冒頭のハチャメチャなノリが自分には合わなかったからです。それに、出会いのきっかけとなるスマホの取り違えも、あんなに厚みが違うのに気づかないとかありえないと思ってしまい、ちょっと物語に入れなかったからです。あと、しだいにわかってくるとはいえ、人物の相関や舞台背景なども、序盤ではつかみにくかったです。レコードを探す老人の背景がわかってきたあたりからおもしろくなるのですが、そこまでがやや退屈でした。
また、タギングとかいう行為で、俳句に染まる世界観を表しているのかもしれませんが、これにはちょっと共感しかねます。俳句はもっと情緒的なものだと思っているので、ヤンキーの落書きのような扱いには違和感を覚えました。そして、その肝心な俳句も、季語辞典を携帯し、俳句雑誌まで買って勉強している少年の句にしては、心に響くものがあまりなかったのも残念でした。そのため、「サイダーのように言葉が湧き上がる」ように見えなかったのは、ちょっと致命的でした。まあ、自分が若者の感性を理解できないだけなのかもしれませんが…。
中でも、最も気になったというか、釈然としなかったのは、チェリーの人物像。コミュ障というわりには、普通に陽気な友達が何人もいるし、人と関わるデイサービスでしっかりバイトしてるし、スマイルともすぐに仲良くなれたし、もう違和感しかないです。ラストの盆踊り大会では、衆人環視の中で圧巻のマイクパフォーマンス!変容とか成長とかいうレベルではなく、もはや転生か別人を疑いたくなるほどでした。
というわけで、気になるところは多々ありますが、おそらくこれは気にしたら負けの作品です。チェリーとスマイル、フジヤマさんも加えて、田舎の素朴な恋愛をふわっと楽しむのがよいのではないかと思います。
ヘッドホンで外界を遮断するほど、まわりが厳しいようには見えませんね。
まあスマイルとおなじく、思春期の自意識として見ればよいのかもしれませんけど。
でもやっぱり説明不足かなあ。
こんばんは。わたしも、チェリーがコミュ障だとは思えませんでした。また、「竜とそばかすの姫」のすずも陰キャと言われていましたが、おばさま達と仲が良いんだからそうでも無いと思いました。今どきの子はうわべだけを見てすぐ決めつけますから、その辺はかえってリアルかもしれません。