劇場公開日 2021年7月22日

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「日本語の勉強はいいけど落書きはダメ」サイダーのように言葉が湧き上がる フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

日本語の勉強はいいけど落書きはダメ

2021年7月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ヘッドホンとマスクを外す話

大分前から予告編はで見ていたけれどコロナで上映延期され、その間劇場に行く度に予告編を見せられ、いったいいつになったら上映するんだ?
正直、予告編見過ぎて辟易していました。ですので作品に罪はないものの見る前から期待値が下がっておりました。
「竜とそばかすの姫」よりはましだろうな程度におもいつつ鑑賞してみました。

いや~面白かったですよ!
鑑賞前の負の感情なんかものの数分で吹き飛ばされました。
色合い、風景、キャラクターデザイン、どれも個性的で新鮮でした。
ビビットカラーと言うか、なんだろう配色がいいんですよね、懐かしさと現代のお洒落さとの融合的な感じが刺激的でしたね。
背景はCG多用されてましたが、けっこう記号的な感じで本作の世界観になじんでたし、そこまでの違和感もなく上手な使い方だったと思います。
癖が強すぎることもなく世界観が構築されてるので違和感なく見てられます。

物語はよくある「夏の恋」的な青春ものですが、俳句少年と出っ歯少女の劇的急接近型の恋ではなくジワジワ距離が縮まる遅延型の恋。個人的に大好物です。

予告編で見た以上の事はほとんど起きないので、展開も読めるしぶっちゃけ驚きは少ないのですが、それを補って余るほどの不思議な魅力はあります。

恋と引っ越しとレコード探しが本作の大筋なので、アクションシーンなんか生まれるはずもなく動き的に退屈になるかと思われますが安心してください、冒頭でなかなか見ごたえあるスケボーシーンが有ります。
本作唯一のアクションシーンなだけに気合が入ってます。制作側のアニメは動かしてなんぼって意思を強く感じますね、スピード感、グニョグニョ、ヌルヌル動く作画、楽しかったすね~。
アクションシーンはさておき、日常も全体の作画安定してるし、クオリティは間違いなく高いのでアニメとしても満足できます。

主人公役の市川染五郎の演技もよかったです、素人過ぎずかつプロ声優ぽくもなく、等身大の青年、チェリー君を上手に表現できていた様におもいます。
ヒロイン役の杉咲花、これはもう文句なしで上手でしたね。圧倒的ヒロイン感、声から伝わる可愛さがスマイルにピッタリ合致しててとっても良かった。
本業の女性声優を起用してかわいいスマイルが見れたと思うのですが、本業じゃない杉咲花だからこそ出せる説得力があった様に思いす。

登場人物はそこそこ居るのですがほとんど説明がなく、どんな人物なのか掘り下げてないのですが不思議と全然気にならない、友達なんだなとか姉妹なんだなとかその程度のざっくり感。
下手に説明を入れず、会話だけでなんとなく人物を想像させ、行動でキャラクターを立たせる。お見事な脚本&演出でした。

劇中何度もでてくる田んぼの畦道が印象的。
帰り道で何気ない会話、青春ですね~、学生時代思い出しますね~。
畦道のシーンは二人の心の距離を上手く表してるいい舞台装置でした。
そう言えば「漁港の肉子ちゃん」でも田んぼの畦道シーンが何度かありましたね、これもいいシーンでした。
通学路、通勤路って毎日通から何にも意識してなかったけれど、ドラマが隠れてるんだな~。

この作品は正直言って知名度低いし大ヒットはしないだろうけれど(ヒットしてほしい)、夏にピッタリの青春映画です、学生が見ても楽しめるし大人が見ても楽しめる万人向けの映画だと思いました。
知ってる人だけ、見た人だけがわかる、お得感と言いますか、隠れた?名作になるのではないだろうか。

ここからは完全に妄想ですが
数年後とかに夏休み期間中に昼間TVで放送して、たまたま見てみたら思いのほか心に残った、レンタル店で見つけて期待してなかったのに意外とよかった、サブスクで配信されて気軽に鑑賞したら感動した。
ノーマークで暇だったから見てみたらめっちゃ面白かった!みたいな感じで、思春期の方々にいい意味で影響を与えるんじゃないかな?
家族や友人とわちゃわちゃしながら見るよりも、一人で見て、一人で楽しんで、心の中にそっとしまって置きたくなるような作品。
あんまり宣伝しないでTV放送されて、世間の目に留まり再評価される。って未来が私には見えた!(何言ってんだこいつ?)

「竜とそばかすの姫」よりよっぽど夏休み映画です。
制作者の方々、楽しい作品ありがとうございました。

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劇中セリフより

「山桜」

季語の成り立ちとかレコードとか前歯とかいろんな要素が含まれてて凄い。
花見の季節はとうに過ぎたけれど、緑の葉を元気いっぱい広げた山桜を見るのもいいかも知れませんね。

フリント