「やりよったな、ピージャク」彼らは生きていた kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
やりよったな、ピージャク
映画館で観終わった後、スターチャンネルで録画してあった「ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド」をチェックした・・・あ、一緒やん!ビックリしたが、単にタイトルが原題のままだったわけか。と、すぐに消さずにやっぱり再見してしまった。
かなり仕掛けがいっぱいあるピーター・ジャクソンのドキュメンタリー。全編に退役軍人のインタビューが流れているという特徴の中、序盤ではモノクロ映像のままで、戦地に旅立つ前のイギリス兵の様子を映し出しているのですが、これが好戦的というか、戦意高揚させる内容のものばかり。ドイツを叩きのめすだの、19~35歳という年齢制限がありながらも年齢を誤魔化して19歳未満の志願兵たちがいたこと。臆病者を表す「白い羽根」のエピソードなんてのもありました。
戦地に着任してからはカラー映像。どうやって着色したん?とか、兵士たちの会話が見事に入れられてるやん!とか、音響すごすぎ!といった驚きの連続。ジグザグに掘られた塹壕の生々しさ。死体の血の気を失った顔の色や、血をどぎつく着色しているところは、さすがホラー出身のピージャクだ。
中盤では西部戦線が小康状態になった際の兵士たちのリクレーションも描かれ、酒、タバコ、ギャンブル、売春宿など、どこか笑えるシーンも満載。「戦争にはどこか滑稽さがある」といった言葉も印象的で、序盤の雰囲気も一転する。それが終盤、前線でドイツ軍に突撃することになって、悲惨さを強調していくといった構成になっています。
戦争の虚しさ。何のために戦っていたんだという回顧の言葉。ドイツ人といってもたちの悪いのはプロイセン人だとか、兵士たちの色んな思いが詰まっていた。最初は敵を殺すことに躊躇っていたのに、白兵戦となったら殺戮したい欲求にかられるといった極限の心理状態も伝わってきました。戦争は何も生まない。破壊、殺戮があるのみ。最も印象に残ったインタビューが「ラグビードイツチームと試合後、食卓で団らんしている時にイギリスの宣戦布告の放送が聞こえた」という人。「とりあえず今日は聞かなかったことにして・・・明日から」