「~「事情を抱えてない人間なんて、いないからね。」~」閉鎖病棟 それぞれの朝 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)
~「事情を抱えてない人間なんて、いないからね。」~
【賛否両論チェック】
賛:様々な事情を持つ人々の日常が赤裸々に描かれ、厳しい風当たりの中でも必死に生きていこうとする姿に、思わず考えさせられる。
否:精神疾患の辛さや偏見、女性への乱暴等、内容的には軽い気持ちでは観られるものではない。
かつて自身の妻を殺めてしまった秀丸や、幻聴に苛まれ家族との縁が切れかけてしまうチュウさん、他にも1人1人それぞれの複雑な事情を抱えながら生きる、閉鎖病棟の患者達。そこへやって来た由紀の存在が、秀丸達の心にわずかな変化をもたらしていく様が、由紀自身が直面するDVという哀しい問題と共に、変にオブラートに包まれることなく赤裸々に描かれていく中で、その厳しくも現実的な姿が胸を打つ部分が沢山あります。
しかし同時に、それでも完全に立ち直ることが難しい精神疾患の辛さや、理解なき偏見から来る孤立、そして理不尽な暴力等、主人公達を取り巻く難しい環境の数々に、思わず考えさせられてしまうのも事実です。思わず目を背けたくなってしまうようなシーンも結構あるので、観る人は選ぶ内容かも知れません。
簡単に気持ちでは観られない作品ですが、決して見過ごしてはいけない実社会の一部分を、是非ご覧になってみて下さい。
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