「浅はかな決断を下す映画」閉鎖病棟 それぞれの朝 とけいさんの映画レビュー(感想・評価)
浅はかな決断を下す映画
うーん。
タイトルから想像していた、「閉鎖病棟」というディテールが、徹底的に抜けてて、観ていて「はあ???」となりました。
閉鎖病棟の中をある程度知っている人からすれば、勝手に入院患者が外に出歩くなんてまずありえない(要所要所に鍵がかかりまくっている)。あと窓もそんなに開きません。(飛び降りたりしたら大変だからだと思います)
レイプ事件が起きて、それが物語の主題のようになってしまって、「精神患者の状態や実態を描く」ことから、かなりずれた構成だったと思います。
これでは、実際の精神に障害をもたれる方々を誤解する影響もなくもないのではと、観ていてかなり不満でした。
問題のレイプ事件が例えば本当にそのようなことが起こったら、病院の責任だと思います。
陶芸室にも鍵をかけてなく、問題のあった患者にもその時に人をつけていなかった訳です。
そのような事態を防げなかったのは現実的に考えれば病院の責任となるところを、なぜか他の患者が「裁かねば」と思っている…。これは大変おかしなことです。
院長が出てきて、二度とこういうことが起きないようにと謝罪し、対応するのが現実だと思うのです。
それではドラマにならない?
いやそれならば、こんなドラマは観たくもないです。
あともっとディテールに関して言えば、出演している患者の役者の演技、設定というのでしょうか、何の病名をつけられた患者なのか、観ていて分かりませんでした。これは演出不足だと思います。「それっぽく(精神病患者を)演じて」みたいな感じで現場が進んだとしか思えないような印象です。これも観ていて腹が立ちました。
あと、これは個人的意見で、全く非賛成があっていいのですが、本当に、例えばレイプをした人には「死ぬべき」というのが妥当な考え方なのでしょうか。
自分はそうは思いません。
「生きる価値がない」とまで役者に言わせていますが、それはどうかと思います。
罪を償う、刑罰を受ける、心から反省し謝罪する…
被害者の方にとって、何が今後の人生に大切となることなのか、自分にはまだ想像が及ばない範囲でありますが…
どんな加害者でも裁かれる権利はあると思うのです。
残念なことに、自分はそのような「生きる価値がない」と思える人も含めて、皆が生きているのが「多様性をもった社会」であると考えています。そういったタイプの自分には、この映画の下した決断が、とても浅はかなものに見えました。