「夫婦の、そして中国の30年史が大河のように流れゆく」在りし日の歌 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
夫婦の、そして中国の30年史が大河のように流れゆく
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映画が幕を降ろす時、流れ行く一本の大河を思った。この夫婦が歩んだ30年に及ぶ旅路はどれほどの心の痛みに満ちたものだったろう。まるで記憶を遡るみたいに、遥か遠くから水辺の風景を捉えるカメラワーク。逆にどれだけ時を経てもいつもすぐそばにある、光に満ちた家族団欒の食卓。または仲間たちが肩を組んで興じるダンスパーティー。3時間という長尺で描かれる構成は決して時系列ではなく、むしろ我々は夫婦の胸に浮かんでは消えゆく様々な思い出にじっと身を任せているかのようだ。
街は大きく変容を遂げ、労働状況も変わった。知らぬ間に貧富の差も拡大した。そうやってあらゆるものが猛烈に変わりゆく中でも、今やすっかり老け込んだ夫婦の思いだけは何一つ変わっていない。そのことにしみじみとした感慨を覚え、二人への慈しみはますます深まるばかり。彼らの心象を通じて現代中国の姿が浮かび上がってくる。暗転した瞬間、思わず溜息がこぼれた。
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