「一人っ子政策の愚かしさを、ある家族の年代記で体感させる」在りし日の歌 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
一人っ子政策の愚かしさを、ある家族の年代記で体感させる
中国の“改革開放”と“一人っ子政策”を、言葉として知ってはいても、「在りし日の歌」のヤオジュンとリーユンの夫婦が生きてきた1980年代、90年代、2000年代、2010年代を追うことで、そうした政策が人民にどのような影響を及ぼしたのかを疑似体験して学んだ気がした。抽象的な情報が、具体的な体感に変わったと言ってもいい。
90年代→00年代→80年代といった具合に、4つの年代を行ったり来たりする構成が巧みだが、分かりづらくはない。ミステリーというほどの謎ではないものの、人物たちが抱える秘密や決定的な出来事を、効果的なタイミングで観客に明かすための仕掛けなのだ。脚本と監督のワン・シャオシュアイの筆致には、極端な政策を押しつける共産党幹部とそれを盲信して従った人々への静かな抗議を感じさせるが、翻弄されたヤオジュンとリーユンへの優しいまなざしが、作品にヒューマンな温かみをもたらしてもいる。
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