「貧困と助け合い、そして心の傷と」ニューヨーク 親切なロシア料理店 みにこさんの映画レビュー(感想・評価)
貧困と助け合い、そして心の傷と
貧困、暴力、相互扶助
テーマとしては凄く良かったと思う。
これらのテーマを根底に、時代遅れのやたら仰々しい老舗のロシア料理店を舞台にそれぞれが役割を担いストーリーが展開していく。
夫の暴力から二人の愛すべき子供達を守るため、着の身着のままニューヨークへ向かったクララ親子であったが頼みの綱であった義父にも断られ途方に暮れてしまい…。
ニューヨークという大都会を舞台に物語を面白くするためには仕方ない部分ではあるが、盗みを働く場面が多すぎて、個人的には不快に感じ、この母親に嫌悪感さえ抱いてしまった。
そこまでして自分をよく見せたいの?
子供を守る方法が違うんじゃないの?
子供に広い世界を見せたいのは分かるけどだからって先立つ物もないのにニューヨーク、マンハッタンとか安易すぎるし、ひもじい思いをさせたくないのは分かるのだが窃盗とか根本的に間違ってるし。
母親の行動に終始モヤモヤし、更に彼女に惹かれてしまうマークにまたモヤモヤ。
ただこういう人達にも分け隔てなく救いの手を差し伸べるキリスト教的観点に則してみれば、こう思ってしまう自分ってやっぱり小さいのかな、とアリスの存在により思わされてしまった。
この映画は主人公よりもむしろ看護師のアリスなしには成立し得なかっただろうし、このアリスの無償の親切こそ人を惹き付け、周りに人が集い、やがて心に傷を負った人々を再生させてしまう真に素敵な人だと思った。
そんな訳アリの人々に居場所を提供し、優しく見守る謎のオーナーもまた所々でこの物語に彩りを添えていて良かった。
アリスが主人公ではなかったからこそ色々感じる部分もあり、そういう意味ではいい映画だったかな。