「タイトルなし」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ kazuyuki chataniさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
逆「ヴェニスに死す」。
とにかく醜い人間(見た目も中身も全てが)ばかりをかき集め、醜い生き様をそのまま差し出した形。
しかし、エンドロールを見ると再現度が凄まじいっぽい。あれは凄い。
それから、70年代の実在する事件をそのままやっているのだけど、現代性があるというか、ナ・ホンジンも「チェイサー」で同じネタ、つまり売春婦(この世に不必要な醜い人間)を殺しても誰も通報も捜索もしない、という現実を描いていて、もはやこれは普遍性なのか、人間の。
また感心したのが、2時間弱醜悪な人と出来事しか出てこないのだけど、「男はつらいよ」の寅さんや「北の国から」の純君や「隠し砦の三悪人」の馬鹿たちを見続けるよりよっぽどストレスもなく楽しめた。演出力なのかな?または「馬鹿で人に迷惑かけるけど、笑って許してやってよ~」という甘えがないというか。"そのまま見せる"人間に対する姿勢が良いのか。見ていて気持ちがいい。
それから、自分がお酒飲むのやめた事もあって、一度断酒と真っ当な生活に戻ることを決意した(殺人後なんで全然遅いけど)主人公に出会う人出会う人みんな酒を勧め、挙げ句一度酒を断ったの知ってるはずの好きな女性にまで勧められ、苦笑いでアル中殺人の世界に舞い戻るくだりが切ない。人間って弱いのよ、助けてやってよ、と思いました。
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