劇場公開日 2020年2月14日

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「愛されるすべを持たない男の狂気!」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0愛されるすべを持たない男の狂気!

2024年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

実在するシリアルキラーを描いた映画は幾度か見てきましたが、本作ほど娯楽性を一切取り除き、すべてが不快で不潔に実在の殺人鬼を描いた映画は今までに類を見なかったでしょう。あまりにもフリッツの言動がリアルに描かれているので、殺害ドキュメンタリを観ている感覚に陥いりました。

フリッツを、実在に似せイケてない不幸でブ男にし、言動すらイケてなさを表現することで嫌な人間味をリアルに感じてしまいます。愛されるすべを持たないフリッツが選ぶ女性も、誰が見ても見た目も精神状態もイケてない年配の女性ばかりですが、弱者である彼女ですら手こずるフリッツがこれまた妙にリアルです。感情に任せた無計画な殺害も不快感を一層引き立てました。

屋根裏部屋の家の作りや雰囲気も実在とうり二つに作られているらしいですし、行きつけのバー「ゴールデン・グローブ」も実在のお店での撮影ということで、雰囲気も抜群でした。癖のある常連客もフリッツに対して敵でもなく味方でもない、微妙な関係性も何とも言えない距離感でした。フリッツ自身はこの店でちゃんと認められた存在なのですよね。

そんな不快さのリアルを追求した映画の中で、唯一といってよい娯楽性(花?)を描いたのが、女学生のペトラの存在でした。一瞬にして彼女に惚れてしまうフリッツですが、結局手を出すことが出来ず映画は終わってしまうのです。フリッツの人生を象徴するかのような、醜さと対照的に描いた花が決して手が届かない存在としてなったのではないでしょうか。

さて、結局のところ映画全体の感想ですが、面白いと思うような要素は全く無く嫌な気持ちにさせられますが、実在したシリアルキラーの心理面が手に取るようにわかる映画でしたので、見ごたえ十分な作品でもありました。でも、2回は絶対に観たいと思わない映画でもありますね…。

だいふく