劇場公開日 2020年2月14日

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「高度成長期の西ドイツで忘れられた人々」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5高度成長期の西ドイツで忘れられた人々

2020年3月14日
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鑑賞方法:映画館

大好きな『女は二度決断する』に続くファティ・アキン監督作。1970年代のハンブルクに実在した殺人犯フリッツ・ホンカを描く。

いきなり『切断』からスタート。これはさすがにきつかった。ぐっと耐えた。そこからは彼の生活を淡々と追う。

容姿が悪いだけでなく気味悪い。まともな女性には相手にされんし、行きつけのバーで引っかけて部屋に連れ込むのは汚い婆さんばっかで立つものも立たんし、そもそも切断したモノが部屋にあるんで、その悪臭を思っただけでゲロ吐きそうになるし、もう最悪。見ていて可哀想になる。

彼は壊れていた。罪の意識はなかった。思えばバーに集う人々も皆まともでなかった。殺された女たちに住む家はなく、気にかける人もいなかった。

敗戦後のドイツ人の癒えない傷が見え隠れする。日本と同様に高度成長を遂げた西ドイツにあって忘れられた人々がいた。アキンの描かんとしたことがわかった気がした。

やりきれない気持ちで帰路についた。唯一の光明は美しい女学生に対する妄想だろう。ただそこのみに光がさした。

エロくそチキン