「明らかに好みの分かれる狂気の作品です。」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
明らかに好みの分かれる狂気の作品です。
変な作品がたまに観たくなる衝動にかられる事があるんですがw、予告編で観る限りでは殺人鬼の話であっても、何処か物悲しい作品なのかなぁと言うイメージぐらいでしたがとりあえず鑑賞。
で、感想はと言うと、すんごい変態でゲスな感じw
エグい。ゲスい。グロいの三拍子の三冠王w
ここまで臭いた立つ様な生々しくも気持ちが滅入る作品も珍しい。ある意味凄い作品。
フリッツ・ホンカが恋い焦がれるペトラがフリッツの手に掛からなくて良かったなぁと思いますw
もう主人公のフリッツ・ホンカがクズで鬼畜で最低野郎過ぎ。
実在した殺人鬼でシリアルキラーの話ではありますが、終始ゲスでグロい。映像も汚く何処か生々しい。登場人物達も殆どゲス。
娼婦の老女達も良い具合で生々しくゲスい。
ゲスの極みな感じで、かと言って同情出来ないかと言うと同情出来ないけど、ここまでゲスいと逆にコメディに感じます。
フリッツ・ホンカがゲルダに自分の娘を差し出す誓約書に「多大なる恩恵を受けたので、娘をつまみ食いさせます。」なんて文章は字幕でのちょっと強引な和訳でも笑ってしまうし、急にバスに撥ね飛ばされるのが修道院の前と言うのもコメディチック。
そう考えると凄い作品なんですよね。
とにかく、フリッツ・ホンカに尽きる訳で、フリッツ・ホンカが酒の力を借りると欲望のままに赴き、弱い者に対してのみ虚勢を張る。
実在のフリッツ・ホンカは幼少期の体験から大酒飲みになったとの事でその辺りの件りは劇中では描かれてないので、フリッツ・ホンカに同情する部分は殆ど無いんですが、哀れと言えば哀れで、その哀れっぷりを差し引いてもここまで外道っぷりを描ききるとある意味天晴れ。その振り切れ具合がブッ飛びまくってます。
フリッツ・ホンカを演じるヨナス・ダスラーは弱冠24歳ですが、特殊メイクで40代の中年を演じきってるのが凄い。
とにかく、さえない駄目男過ぎて、稀代のシリアルキラーに違和感が無い。
また、フリッツ・ホンカの周囲も良い具合でダメダメ。
弟のジギーも結構なゲスっぷりだし、乱れまくったバー「ゴールデン・グローブ」の客もダメなら、店主も良い感じで無関心。
再就職先の勤務地で掃除婦をしているヘルガが良い御婦人かと思いきや、会社の休憩室で旦那と酒を飲んでる。
唯一普通な感じなのはフリッツ・ホンカが恋い焦がれるペトラとペトラのボーイフレンドのヴィリーぐらい。
ツッコミ所としては、数々の犯行が明らかになるフリッツ・ホンカの下の部屋が火災になった原因が明確でない事。
当初は下の住人が天井から蛆虫が落ちてきた事に腹を立てて、火をつけたかと思ったけど、それならあまりにも無計画で短絡的過ぎる訳で、史実では下の住人が蝋燭の灯りを消さずに外出した事が原因で出火したとの事で、この件りの描写が無かったのはちょっと惜しいかな。
白の中に黒を入れるとより黒が際立つんですが、フリッツ・ホンカの回りはお世辞にも白では無く、かなりの灰色。そんな灰色の中でもフリッツ・ホンカの放つ狂気の黒は果てしなくドス黒く際立ちんですが、灰色の中だからこそ、目立たなかった。
彼の持つコンプレックスが女性への欲望を掻き立て、1970年の動乱のドイツで全てが不安定な中、低所得者の貧困層はいろんな不満と欲望が渦巻いていた事も狂気の思考が生まれた要因かと思います。
それでもここまでブッ飛んだ思考を凄まじい描写で描くのが凄すぎ。
明らかに好みが分かれる作品ですが、こういうブッ飛んだ珍味的作品を所望したい衝動になりましたら如何でしょうかw