「最初の一歩を踏み出したヒロインの祝福されるべき衝動」ペトルーニャに祝福を 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
最初の一歩を踏み出したヒロインの祝福されるべき衝動
あらゆるドラマは意志と衝動によって生まれる。この映画のヒロインも日々の暮らしで様々な抑圧を受ける中、内側に秘めたものを徐々に膨張させ、マケドニアの小さな町に暮らすあらゆる人々が目撃しているであろう伝統行事の最も大切な瞬間に、つい炸裂させてしまう。この行為の意味を彼女が理解するのはだいぶ経ってからで、私はこの瞬間、ペトルーニャのことがどこか50年代のアメリカで白人にバスの席を譲るのを拒否した歴史的女性、ローザ・パークスのようにも見えた。きっとパークスがそんな行為に出たのも理屈を超えた意志と衝動がきっかけだったのではないか。それによって歴史はうねり、染み付いた悪しき常識はものの見事に覆っていく。本作はその最初の第一歩を、時にコミカルに、そしていつしか笑いを通り越しシリアスへと振り切れるくらいピンポイントに描きこんでいく。彼女のどんどん度胸が座っていく態度、表情、まなざしに興味が尽きない一作だ。
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