「"Ben Is Back"。シンプルだが深いタイトル」ベン・イズ・バック AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
"Ben Is Back"。シンプルだが深いタイトル
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督のロシア映画「父、帰る」は12年ぶりに突然帰宅した父が幼い兄弟らの家族の暮らしに不穏な波紋を徐々に広げていく話だった。一方「ベン・イズ・バック」は、オピオイド鎮痛剤で薬物依存症になり施設療養中のベンが、やはり前触れなく帰宅して家族を驚かせる。ただしこちらは丸一日という限られた時間の中で、ベンの周囲に暴風が吹き、荒波が巻き起こる。ベン本人は台風の目のように平静(を保とうと努める)だが、過去の人間関係や犯した過ちが家族と地域の人々の心をざわつかせ、大きなトラブルへと発展してしまうのだ。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でケイシー・アフレックと対峙して才能を世に知らしめたルーカス・ヘッジズが、今回は母役ジュリア・ロバーツと見応えある演技を繰り広げる。ロバーツの強い母の愛が物語の推進力であり、確かな希望にも。題名の二重の意味を明かすエンディングの潔さも見事だ。
コメントする