「美しい夫婦愛の物語を期待すると・・・」ロマンスドール りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
美しい夫婦愛の物語を期待すると・・・
美大を卒業した後フリーターをしていた哲雄(高橋一生)は、大学時代の先輩からで働き口を紹介される。
そこは、アダルト用品としてのラブドールを制作する下町の工場(こうば)。
試作品をつくった哲雄に対して、社長はダメだと一喝。
より本物らしく・・・を目指した哲雄と先輩造形師・相川(きたろう)は、医療用の再生乳房の型取りと偽ってモデルを募集する。
やって来たのは若い美術モデルの園子(蒼井優)。
一目惚れした哲雄は、思い切って告白し、ふたりは結婚するのだが・・・
といった物語だが、巻頭、ふたりのラブシーンが描かれ、これが10年間の物語であることが哲雄のモノローグで語られることから、すぐに展開は察しが付く。
語る側は残り、語られる側は消える・・・というのが定石。
どう消えるか・・・というのも、観ていく途中で「あ、そうなんだ」となるぐらいの定石のパターンの、不治の病。
で、映画として、難病ものかというと、そんなことはなく、なんだかヘンテコリンというか妙ちくりんとでもいうような感覚に囚われる。
ラブドール職人として、人間に近い(というか同じくらいのレベルの)ラブドールをつくりたいが故に、愛するひとをモデルにする。
江戸川乱歩のような、ある種の変態性が感じられる。
そこへ行きつくまでの終盤、文字で書くとすさまじい。
愛して、愛して、愛し抜く・・・
ここでの「愛して」は、「心底」というよりも、「体の底」から愛し抜く。
病身の妻をひたすら抱き続けるハナシなわけで、これを女性監督が撮っているのだから、体の底から愛してほしい、という夢・憧憬なのだろうか・・・とも思う。
ただし、「男と女の間にはアレしかないんよ」というロマンポルノの名台詞を思い出したが、演じているのが高橋一生と蒼井優なので、ねっとり感に乏しく、綺麗になりすぎたきらいがあって残念。
美しい夫婦愛の物語を期待すると、ちょっと透かされる感じがいい映画でした。
追記>
中盤、園子が哲雄に「隠していることがあるでしょう」と問い詰め、結局、ふたりが浮気の告白をするシーンは、微妙な間合いがあって面白い。
しかし、園子の浮気相手、誰なのかしらん?
3日間の外泊の後、べろべろに酔っぱらった園子を送って来た相手ではないだろうからね。