「ボディランゲージ」ロマンスドール U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
ボディランゲージ
愛を注ぐ人達の話だった。
導入は結構ポップな感じで、ラブドールなんてコアな題材を扱うからこそかと思う。
案外そちら側の世界や概念も紹介してくれていて結構楽しい。人形の胸を揉みしだいた後にピエール瀧氏が「俺が欲しいのは巨乳じゃない美乳なんだ」という台詞が自然に頭に入ってくる。
ネタ的に地上波で放送される事はないだろうけど、内容的にはNHKがガッツリ流してもいい程、崇高な愛の話であった。
とても仲睦まじいい夫婦の話だ。
ただ、旦那様は大人のおもちゃを作る人で、奥様はガンを患う。
予想通りに奥様のラブドールを旦那さんは作るってなる。
ただ、本作に胸元をガッと掴まれたのは、その死に至るまでだ。
SEXしまくる。
その愛しそうな指先に「あなたが必要だ」が溢れ出してる。
本来そおいうものなのだと思うのだ。
離したくないとか、離れたくないとか、もっと近くにとか…愛しいという気持ちを表現し共有する行為。そんなものがビシビシ伝わってくる。体を通して発する言葉を共有する。
旦那が作る人形、それに私を落とし込んで欲しいと奥様は告げる。
それは1つの理由であって、それが何ら不自然ではないような伏線は前半からガッツリ盛り込まれてる。
でも、きっと本心は違うよねと思う。
後、何回彼女を抱けるのだろう?
後、何回、彼を抱きしめられるのだろう?
行為の最中にはそのカウントダウンを忘れられるのかもしれない。だけど、愛しいと感じる度にそれと同等の哀しみが押し寄せるんじゃないだろうか?
女性の方が積極的にも見えた。
自分がガンで、彼の子供が産めないからと離婚を切り出すくらいの奥様だ。私を忘れないでなんて事ではなく、いっぱいSEXして、いずれ多くの夫婦がそうなるように、私の体に飽きてと…そんくらいの切迫感を感じてた。
浮気したってのも実は嘘なんじゃなかろうかと思う。
だが、1つ腑に落ちんのは彼女が死ぬ直前のSEXで…いくら何でもあんな話の後じゃ勃たんて!俺は泣いちゃう。いくら奥さんが頑張ってくれても泣き崩れちゃうような気がする。
彼女の最期は腹上死だった。
かなりハードな、かなり壮絶な死に方だ。一生忘れる事はないだろうと思う。
そんな事を思うと、彼女がSEXしたかった理由は、いずれ訪れる別れに抗いたかったように思うし、残された時間の全てで彼を感じでいたかったのかとも思う。
ラストの台詞は
「ドスケベでいい奥さんだったなぁ」だ。とても染みる台詞だった。勿論、その前フリがあるからこそなのだけど、まるでピンク映画のような〆の台詞だった。
そして高橋氏には、なぜか馴染んでた。
ピエール氏はやはり名バイプレヤーだなあと、この作品を観ても思う。
蒼井優さんに惚れる。
高橋氏に向ける眼差しがとても優しくて…儚げでいじらしく可愛いかった。
是非とも幸せな夫婦生活を送って欲しいと、山里氏の顔を浮かべながら劇場を後にした。