「HELL☻」ドクター・スリープ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
HELL☻
悪夢のホテル籠りから40年、おじさんになったダニーに訪れる新しい出会い。運命と継承。
思っていたモノとは少し違っていたけど、そのギャップや衝撃を含め非常に面白く観られた。
前作よりもエンタメ的で分かり易いストーリー。
ホラー的な恐怖は減り、シャイニング能力へのアプローチがかなり強い。
超能力の超能力たるところがストレートに表現され、別次元で生きる人達を覗き見しているようで楽しかった。
バチバチにキマりまくった映像表現や高い芸術性、意味深さはなりを潜めていたけど、所々でキューブリック監督を意識したようなカメラワークが見られたり、音楽をそのまま使用したりと、ちゃんと「あ!」となるポイントを捉えてくれる。
「シャイニング」における新たな設定と壮絶なバトル。
各地を廻り各キャラごとにエピソードを連ねる描き方に最初は若干困惑したけれど、それらが繋がった時の熱の上がり方といったらもう。
ダークファンタジー的な展開にワクワク。
幾層にも重なったシャイニングの超世界へ、引き摺り込み引き摺り込まれのバトルが連続し、こちらも翻弄されっぱなしである。
と思ったら案外フィジカルな攻撃も混ざっていたりして面白い。
圧倒的ハンティングのシーンが好き。あ、それ効くんだ、っていう。
満を辞して辿り着くホテルにゾクゾク。
例の山道で迫り上がる緊張感。何とも恐ろしく、しかし嬉しくも思った。
おかえり、ダニー。
バーカウンターでの対峙は永遠に感じた。
前作の解釈もふとここで蘇ったりして。
ここに来てようやく爆発するホラー感にも、慄きながら歓喜していた。
血液の洪水はもっと長く観ていたかったかも。鼻で笑わないでよ。
最初は悲しく思った、ダニーの堕落。
あの時のトラウマを抱え、頭の中に無数の禍々しいモノを閉じ込め、自分で自分を抑え付け痛めつける日々。
その後のストーリーから「落ちぶれダニーのパート必要か?」とチラッと思ったけど、堕落で身を包み自らを隠し続けていた彼の半生を知らしめる重要なシーンだと考え直した。
自己を肯定してくれる切ない締め方に涙。
能力を持っているが故、時々ぎこちなくなっていた会話のフレーズ、その変化がもうたまらなく愛おしい。
このエキセントリックな映画の中で、ふと普遍的で大切なモノを置いてくれる優しさ。好き。
よく見る夢の感覚を思い出す映画だった。
操っているようで操られているような、空を飛んでいたのに急に地に落ちていくような、何かに追われて走っていたのに足がもつれて言うこと聞かなくなってしまうような、「悪夢」とまではいかないけれど確実に「苦しい」タイプの夢。
あのもどかしい感覚が、映画を観ながら私の全身に広がっていくようだった。
なんかわかるかな、ふわふわして脚が気持ち悪い感じの。
「死」への恐怖は歳を取っても消えないのかな、と考えてまた深く怖くなった。
私の隣にもドクター・スリープが来てくれたらいいのに。
あーーーあいいなあ、私もイマジナリーフレンドもイマジナリーラヴァーもいっぱいいるし、誰か一人くらい目の前に実態を持って現れてくれないかなあ。