「緊張、不安、恐怖、悲しみそして少しの希望」黒い司法 0%からの奇跡 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
緊張、不安、恐怖、悲しみそして少しの希望
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ずっしりと重たい緊張と、先の見えない不安と恐怖。家族が引き裂かれる悲しみ、そしてわずかに残された希望。そんな感情を揺さぶられる映画だった。
ハーバード卒の弁護士が主人公の法廷ドラマであり、牢獄を舞台にした囚人ドラマでもあり、章仕立てにはなっていないものの、その都度主人公が変わる印象だ。
場面転換も音楽も少なめで、演技に重点を置く構成。多くの法廷ドラマが作られたアメリカにおいて、なお異色の部類に入るであろう。なぜなら、えん罪を晴らすことが目的ではなく、彼らが受けた苦しみを共有する映画だからだ。
ちょっと不純な動機で見に行ったのだけれど、当たり前の話、この映画にはキルモンガーもキャプテン・マーベルも出てこない。本当の意味でヒーローがいない。ただ、法廷で語られる弁護士の言葉には胸を打たれるし、囚人の語る言葉には真実の響きがある。
木こりとして生計を立てていたウォルターが語る森の話は感動的で、美しいリリックになっている。
ネタバレにはなるが、事前に主人公たちがどんな運命をたどるかは実話をベースにしているだけに分かってしまう。問題はそこでどんな言葉が語られ、どんな感情の動きがあるかだ。そして、見た人のいくらかは、この映画で人生が変わるかもしれない。
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