「延々と続く題材」黒い司法 0%からの奇跡 むっしゅさんの映画レビュー(感想・評価)
延々と続く題材
犯人が見つからないから、とりあえずスネに傷のある黒人を犯人に仕立ててしまえば、誰も文句は言わないだろう。一体どのくらいのえん罪が蔓延しているのだろう。
差別というワードで毎年何本もの映画が作られている現状。それでもまだまだ差別が収まらない。それは何もアメリカだけの話ではなく、人種や性、宗教、身分、病気など、自分と異なる物を排除する力の大きさに、もし当事者となった場合の恐ろしさを考えたら・・・。
弁護士役の主人公もまた人種差別の目に晒されながら信念の元に進んでゆく。えん罪として収監されている黒人の苦悩も描かれ、裁判劇へと展開されていく。要は検察側など、黒人が犯人と決めつけているから、捜査資料などまともに読むこともなく、それゆえの最後の裁判のくだりに繋がってゆくところは意表を突かされた。
ただ近年製作過多とも言える黒人差別映画に、まぁこんな展開だよなと、ちょっとくらいの内容では驚かなくなってしまった “慣れ” も怖い。だったらもっと若手弁護士の力強いサクセスや黒人囚人の絶望的な苦悩、警察側のもっともっとのどす黒さ、囚人仲間や弁護側仲間の濃い物語などジェットコースター並みに上下&回転があっても良いのにとつぶやく。
しかして、感情情景を抑えめなトーンで丁寧に描いているこの良作に対し、当たり前のものとして見てしまってはいけない。
コメントする