「ここにいるのに存在しない世界で」ジョーカー humさんの映画レビュー(感想・評価)
ここにいるのに存在しない世界で
今にも果てそうな蛍光灯がチカチカする公衆トイレ
うずくまるアーサーの悲哀に満ちた目、額にうかぶ血管の蓄積した虚しさ
綺麗ごとを並べた壁の裏で排除されて蔑まれて
いつのまにかマグマのようなもう1人の自分を内包させた
しなやかで、強靭な肉体をうねらせて踊る時アーサーは
そのエネルギーがとてつもない方向にはみ出そうとしているのを必死に抑制しているように見えた
どうか、どうかこのまま自分の中にいて、と
自分の居場所を探したかっただけ
小さな喜びを噛み締めたかっただけ
僕は存在するのか。
届かない叫びは刃と化した
あの衝撃から何年経つのか
社会はどう変わっただろうか
彼はこの秋にまたやってくるという
コメントする