劇場公開日 2019年10月4日

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「ジョーカー爆誕!これを見ればバットマンワールドにおけるヒーローとヴィランの立ち位置が分かる!」ジョーカー スイマーさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ジョーカー爆誕!これを見ればバットマンワールドにおけるヒーローとヴィランの立ち位置が分かる!

2019年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

〇評価が真っ二つに割れてる件について
私の場合、事前に「ジョーカー誕生の物語」と知った上で視聴したので、非常に腑に落ちるというか、社会的不満を持つ人や他者から排除されてしまう立場の人たちがどういった経緯でヴィラン側に寄って行くのかというのが非常に分かりやすく描かれていて高評価を付けました。

逆に「ダークナイト」に登場するような狡猾で派手にドンパチする様子が描かれているジョーカーを期待した人やバットマンの世界について何も知識がない人は評価が低くなって当然だと思います。というのも映画としては終始、一人の男がヴィラン(ジョーカー)になるまでの経緯を描いているだけで、物語として谷あり山あり最後にオチでまとめるといった後味すっきりという構造にはなっていません。またバットマンにおける重要人物としてブルース一族などが出て来ても、ただの端役の家族にしか見えないと思います。

〇ジョーカー(ヴィラン)やヒーローという存在について
若干のネタバレになりますが、物語終盤で主人公が扮するジョーカー以外にも民衆が暴徒化してピエロに扮するシーンが出てきます。これを見た瞬間、「今回はあくまで映像としてジョーカーだけにスポットを当てているが、それ以外の社会に不満がある人や虐げられている人達はごまんとおり、その”複合体”がバットマンワールドにおける「ヴィラン」の正体でもあり、ジョーカー個人だけを描きたかったわけではないんだな」と感じました。なのでジョーカーと名乗る一個人をバットマンが倒しても、次から次へとヴィランが現れるし、同じような民衆の中から別のジョーカーが現れてもストーリー的にも全く不思議ではないなとすごく腑に落ちました。

それとは逆に、世間一般的な良識やルールに則り、ルールから逸脱したカウンター的な存在であるヴィランを除外するもの”複合体”が「ヒーロー」と呼ばれる存在であり、その良識側の代表として作られたものがバットマンなんだなと。またヴィランが増加するのに比例するようにヒーローやヒロインが追加で出てくるのも社会構造として必然と言えるかと思います。

(※まあヴィラン側からしてみれば、バットマンこそが悪で、ジョーカーがヒーローなんでしょうけど・・・)

〇最後に
映画を見終えて最初に思ったのが、現代のネット社会で世間一般的に良識と呼ばれるものに外れたことをする人がいる一方で、正義感あふれる人に叩かれ晒上げられる構図そのものだなと思ったことです。(※世間一般的な常識と呼ばれるものから外れているだけで、差別や除外する人がいるのも同様で)

この構造を取り入れてる限り永遠に物語が作れるし、ヒーローとヴィランどちらの視点で物語を描いても、確実に共感を得られる賢い作品作りをしてるんだなと感心しました。またその一方で、この社会構造を物語に取り入れてる限りヒーローとヴィランの戦いは永遠に終わらないし、人々に脳を弄って思考を統一するぐらいしか戦いが終わらない気がするのは気のせいでしょうか?

スイマー