「狂気の演技に息を飲んだ2時間」ジョーカー モリリンモンローさんの映画レビュー(感想・評価)
狂気の演技に息を飲んだ2時間
ノーランが描いたジョーカーも素晴らしい演技で強烈な印象を受けましたが、こちらのジョーカーも負けず素晴らしかったです。
何もかもが不幸の人生で、周りから見捨てられ、トーマスウェインからも気持ち悪いと言われ、最愛の母親からも愛されず、苦しむアーサーの姿に、映画を越えて訴えかけてくるものがありました。
愛情を受けずに育った人間がどうなっていくのかということを。ジョーカーという仮面に身を包んだアーサーも本来愛情を受けて育っていたら別の人生だったんだろうなと。もっと幸せのある人生だったんだろうなあ。
人間として次第に落ちぶれいく姿にどこか観ていて悲しさを感じました。
また、この映画に社会的なメッセージ性を感じた点も良かったかなと思います。ジョーカーが起こした事件がきっかけで街に暴動が起きたあの状況はまさに、弱者が現実に不満を抱えてながら生きているのだと言うことを象徴しているシーンでした。
富裕層(強者)は貧困層(弱者)が倒れていようと踏みつけ、一切気にも留めない。強者は強者でしたかないのだと言うこと。弱者にとってこの社会が生きづらい世界であること。そんな弱者にとってはジョーカーのような存在はヒーローであり革命者なんだと。
どこか忘れましたが、多分アメリカ?の映画館では、ジョーカーを鑑賞する際に入場規制を強くしているというニュースを見ましたが、確かにそういうメッセージ性が強いのかなと思いました。特にアメリカのような社会では暴動や事件が起きてもおかしくないのかなと思いました。日本ではありえませんが。
とにかくこの映画は息を飲むような緊迫感と臨場感で観ていて飽きませんでしたし、これからどうなっていくのかという好奇心を煽るようなシーンが多くて、しっかりとまとまった作品でした。
アーサー(ジョーカー)演じるホアキンフェリックスの演技も素晴らしかったです。あの狂気は映画「シャイニング」に出たジャックニコルソンと重なる部分があり、おそらくこれからもこの映画は名作の一つになるだろうと思いました。
内容が分かりやすくてすっきり終わる。万人が声揃えて面白かったという。そういう類の映画では無いかと思いますが、僕はこの類の映画こそ、監督、俳優の腕の見せ所だなと感じています。意見はそれぞれあっていいと思いますが、僕はこういう映画が好きです。
昔だったら多分意見違っただろうなぁ。
自分から漂いだしたおっさんの匂いも感じられたそんな映画でした。
ブラボー!