劇場公開日 2019年10月4日

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「心の元気な時に…」ジョーカー キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5心の元気な時に…

2019年10月10日
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階級社会や貧困・差別に翻弄され、僅かながらも心の拠り所であったモノさえ幻と化してしまった主人公が、最後に辿り着く悪しき覚醒。

「ダークナイト」のヒース・レジャー版ジョーカー(他のジョーカーも同様だが)と重ねてしまうとちょっと違和感があるのは否めない。

ただ、バットマンシリーズの有名どころは何本か観た上で、恥ずかしながらどれも私にはあまりピンと来なかったというのが正直なところなので、純粋に「絶望から生まれる狂気」の物語として堪能した。

やはり何しろホアキン・フェニックスの熱演。ひとまずはそれに尽きる。

とは言え、本当に「救い」のない話(その救いのなさが、結果的に彼をヒーローにさせる皮肉になっている訳だけど)なので、彼の闇に観ているこちらが引っ張られてしまう。
それだけすごい演技であることは間違いないのだが、鑑賞後のこの重さはさすがにキツかった。
あの最後のゴッサムの騒乱も、警察官の銃撃も、覆面の暴徒たちも、この2019年現在においてはとても単なるフィクションとは思えない仕上がりになっているあたりもまたズン、と来る。

私自身、そういう種類の映画が嫌いな訳ではないものの、心の元気な時、余裕のある時に観ていれば、また違った感慨があっただろうとは思う。

ただ、一つだけ言うなら、貧困や格差、病気や差別がもたらす恐怖を描いた物語としては素晴らしくあっても、それが稀代のダークヒーロー「ジョーカー」の誕生譚であるってのは、ファンからするとどうなんだろう。
彼の行動には原理や根拠がない(分からない)からこそ、彼は強大で恐ろしい存在であり続けられるのではないのか、と思ったりもする。

…というコトで、作品自体のクオリティからも★4.0個にしたかったところですが、「私の今の心の問題」という個人的事情で3.5個とさせて頂きました。

キレンジャー