「良くも悪くも、ヤマカンアニメ」薄暮 Geso_de_Nyoroさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも、ヤマカンアニメ
監督・山本寛(ヤマカン)氏はそれなりに有名な監督で、あくまで個人的に、普通に普通のアニメ監督だと評価しています。『かんなぎ』や『Wake Up, Girls!』も普通に楽しめましたし。特に後者はスッタモンダが勃発したソレ以前までの彼の手がけたシリーズは結構良かったのにと思っています。人間性と創作才能は分けるので、一言居士な性格?も何ら気になりません。
で、今回のこの作品も普通には楽しめました。ですが〝普通〟がこの劇場アニメの仕上がり具合に対して少々足を引っ張ってしまった様子です。TVアニメ12話と比較したった1時間足らずの尺で物語を描くことは非常に難しく、故に苦労も多かったろうと思います。
そのせいかどうかは不明ですが、作品要素のあらゆる部分において振り切った部分がなく、全てが無難でこじんまりとした普通に終始し、今一つ伸びを感じられなかったのが残念でした。
何か一つでも、強く印象に残るスッ飛んだ部分があれば、もっと映える作品だったのでは?と思われます。味付け・演出のコントラストが緩い印象です。
冒頭からの説明チックなモノローグが長すぎで少々鬱陶しい事や、それに監督の趣味?でしょうか、2箇所ばかり必要のない奇妙な描写(必要でもソレに全く気づかない)がありましたし。また絵描き青年の声当てのぎこちなさや、よりによって弦楽器演奏をネタに持ってきたのも、描写が抜群であればイケるのにそこまでの魅力はなく(しかも数秒とは言え止め絵を使ったのはマズイ)、妙な勘ぐりを招くだけになってしまった残念感が沸々でした。
いろいろ書きましたが、そうは言っても全体のビジュアルやお話はソコソコ素敵な内容でした。監督はよっぽどWUG!が好きだったのかな?と思われるフシがそこかしこに見受けられたり、誰が観てもこれはヤマカンアニメだと認識するに容易な程、当人の質感が感じられる作品です。
あとは上映館が少なすぎなのは、巡業上映とかが計画されてたりするんでしょうかね?