「いまさらのオーソドックスな古典的ミステリー・・・」アガサ・クリスティー ねじれた家 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
いまさらのオーソドックスな古典的ミステリー・・・
今から70年前の1949年に発表された、英国の女流作家アガサ・クリスティーの推理小説をいまさら(?)の映画化。
名探偵コナンファンなら、阿笠(あがさ)博士を思い出したりして・・・。「オリエント急行殺人事件」(1974/2017)など映画化された作品の少なくないクリスティーは、約100年前に活躍したミステリー作家だ。
そんな大物のクリスティーをして、自ら"最高傑作"と語っていた作品の、"初映画化"である。今なぜ"初映画化"なのだろう。
一代で億万長者となった大富豪レオニデスが毒殺された。私立探偵のチャールズは、レオニデスの孫娘で元恋人のソフィアから捜査を依頼される。
レオニデス家の屋敷には3世代にわたる一族が同居しており、巨額の遺産をめぐって様々な思惑が入り乱れていた。一族全員に殺人の動機があるなか、さらなる殺人事件が起きる。
印象としては、実にオーソドックスな古典的ミステリーだ。というのも、それは後世の作家たちがなぞった形式だからであり、現代ミステリーに馴れた向きにはシンプルすぎるかもしれない。
ページをめくることでミスリードされていく面白さのあるミステリー小説だ。
本作品にとって、真犯人の意外性はもっとも重要なことである。しかし、それ以外は、密室でもない屋敷の中での殺人事件であり、映像的な派手さはなく、映画化する甲斐のない話かもしれない。
むしろ登場人物の会話(セリフ)だけで、背景の人間関係を成立させるところが多く、演技派の俳優の見せどころ。本作はキャスティングのほうが重要となる。
そういう意味で、「天才作家の妻 40年目の真実」(2018)でアカデミー賞ノミネートされたグレン・クローズが、大伯母イーディス役で出演していることが目玉である。ほかにも子役ジョゼフィン役のオナー・ニーフシーなど、キャスティングの注力が分かりやすい。
時代背景が古く、捜査手法もゆるくて、ツッコミどころ満載だが、古典的な展開とあわせて、安心して楽しめる。
映画がファンド化した現代は、原作がないと映画のためのお金が集まりにくい。世界中から原作を漁るのは当たり前で、本作のように過去の名作にも再脚光が当たる。名作が名作と語り継がれる映画化である。
(2019/4/23/角川シネマ有楽町/シネスコ/字幕:松浦美奈)