ボーダー 二つの世界のレビュー・感想・評価
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ミステリーやホラーよりも、自己発見の物語。
原作者が、これもスウェーデン発のホラー「僕のエリ 200歳の少女」の人。
スウェーデンの税関に勤める女性ティーナは、ネアンデルタール人のような風貌で人々が奇異な目に晒されてながら、優れた嗅覚の六感で仕事こなす優秀な職員。
スウェーデン郊外にある森の中や泉が、美しく神秘的に描かれて、そこに佇むティーナの心情を和ませる。
18禁の映画なので、残酷描写とかが凄いのかと思ったら、ティーナから男根の様な生殖器が生えてセックスをして、醜い姿に苦悩するヒロインが、実は、神話になっているトロル種族の末期だった。
つまりムーミン族でしたのオチ。(アニメにもなったねえムーミンです)
思えば同じ原作者の「僕のエリ 200歳の少女」も実は〇〇でしたが後半あったので、なるほど納得。
ただヒロインのティーナが、人間とは違うトロル種族で、多くの同胞が、過去に人間から迫害を受けていた部分は、スウェーデンの原住民サーミ人の差別と迫害の歴史とダブる。
そういえば、サーミ人の差別と迫害を描いた苦手青春映画「サーミの血」を思い起こす。
アメリカではインディアンもそうです。原住民を後から来た開拓者が迫害する歴史は、何処の国にもあるから。
ティーナ役の主演女優のエバ・メランデルは、特殊なメイクで、ネアンデルタール人のような風貌の女性を好演。
監督のアリ・アッバシはスウェーデン国籍の中東系らしく、落ち着いた演出で物語を上手に紡ぎ、脚本も手掛けている。
傑作ですが、癖が強いので見る人を選ぶかも。
底知れぬ怖さを感じる
本作品の「ボーダー」という言葉には複数の意味合いがあると思う。ひとつは文字通りの国境という意味で、主人公は税関職員の仕事をしている。もうひとつは隠された意味合いで、主人公は実は二つの世界の狭間に存在している。
人間にとって言語を理解し使うことは、人間としての尊厳を確立するための最重要な条件である。他人の言葉を理解せず、言葉による表現もできない人間は、場合によっては人間扱いされない。逆に見た目が完全に犬であっても、言葉を話し理解すればその人格が認められる場合がある。携帯電話の某キャリアのCMがいい例だ。
本作品の主人公ティーナは怪異な見た目ではあるが特別な能力があることで税官吏になれた訳だが、少なくとも言語を理解するから人間扱いされているのであって、もし言葉ができなかったら警察犬並みの扱いであっただろうと考えられる。
何も説明せずストーリーの上で徐々に真相を明らかにしていく手法は見事で、ミステリーとしては上出来の作品だと思う。ジョン・カーペンター監督の「ゼイリブ」という映画を思い出した。日常的で当たり前に見える光景も、ひとたび仮面を剥がせばその下には異形の存在が隠されているかもしれない。
映画を観ている間はそれほどに感じなかったが、終わっていろいろ思い返すと、この作品には底しれぬ怖さを感じる。大音響と映像で驚かせるハリウッドのホラー映画とはまったく違った、本物の怖さというか、現実にあってもおかしくない怖さである。結末も真相もすべて観たにもかかわらず、思い出すと怖くなる作品は滅多にない。もしかしたら大変な傑作ではないかという気がする。
ファンタジーをあえてダークに?
なにを観せられているのか
ミステリーかと思ったら伝奇ものでした。
日常の緊迫
私は異質だった。自分が何者か妄想していた。
自分が周りの人間とは何かが違うことはとっくに気付いていて、それはただの障害なのかなんなのか、だけど他人にはない異能は自分を認めてもらえる才能であるし、現に成果を上げ認めてもらっている。・・・
そんなモヤモヤな気分のティーナの前に現れた、同類の臭気ダダモレのボーレ。
この展開で予想するのは、ホラーしかない。実際、R18指定に相当するグロい表現もある。
しかし、最後に残された感情は何と言っていいのだろう。知らず知らずに自分も関与していたような罪悪感、か。まるで彼ら”トロル”は、人間界に紛れ込み、人間の子として育てられた鬼だ。だけど、けして鬼=悪魔ではない。それは人間側が作り上げた”憎むべき敵”という虚像なのだから。日本においては奈良平安期の蝦夷がそうだ。そして、「桃太郎」における鬼もそう。芥川龍之介「桃太郎」の鬼をみればいい。狡く憎むべきは、鬼ではなく、桃太郎だ。ほんとうは平和に慎ましく暮らしていた鬼の世界に、土足で踏み込み彼らの財宝を奪い去った桃太郎は、彼等にとっては極悪人でしかない。同じ感情をボーレが持ったとして、なんの不思議があろうか。
普通の人間とは異なる世界に浸った
R18+にしなくてもねぇ
ムーミン伝説のある北欧の土壌が生んだ映画で、人類が今抱えるそしてこれまでに犯してきた色々な諸問題が暗喩として複雑に含まれる映画かと。
「トロル」の二人の外観は尾っぽがある類人猿といってよいでしょう。体毛は薄いほうです。性器は半陰陽(雌雄両方ともある)。二人が交わる場面で、外見は女性型の主役の股間から、ぶなしめじのようなぺニスがニョキっと出てきます。外見が男性のほうは自ら森でぺニスをナイフで切り落とす場面がその前にあり、港の税関で身体検査した男性職員が、股間はツルツルで非常に気まずかった。と、ティーナに話す場面があります。その後、胎児のような子供を生むので、基本的に外性器は両方あり、内性器には子宮があるものと思われます。時や相手によって、心も体(性器)もトランス可能であるものと思われます。便利!というか、ジェンダーの問題も網羅しています。主役のティーナの方が怒ったときは性格もワイルドで、男っぽい。年老いた育ての父親から秘密を聞いた時も非常にワイルドに反応します。
人間によって囚われて、殺されたり、施設で人体実験や臓器移植に共され、種の絶滅の危機にある動物とヒトの間。
歴史的に繰り返されてきた侵略による民族の滅亡やさまざまな人種差別を思い起こさせます。世界で最初の心臓移植はヒヒからヒトへの移植でした。
特殊メイクも俳優さんの表情がわかる程度で、とくにティーナ役の女優さんの目元には理知的な感じが残っています。眉の盛りと目を小さくすると、ああゆう顔になります。実際、そういうひとはまれに見かけます。中学の数学の先生がそうでした。確かに異形ですが、あまり容姿のことをいうと差別、蔑視が強いヒトと…
先生の奥さんはとても綺麗な美人で、美女と野獣と言われていたのを思い出しました。
トロルはヒトへのリベンジと繁殖による種族の復活を目論みます。悲しい映画です。
R18+にするぼどの暴力と性描写はないと思うのですが。性器も作りものだし。
多感な若い人が見た方がいい映画です。
おじさんが見ても、先がないんだから。
スウェーデンの文化人に共通する怒りと憤り
『ミレニアム』はスウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによるミステリー。映画ファンにとっては三部作のうちの第一作を映画化した「ドラゴン・タトゥーの女」といえばお分かりだと思います。
リスベットとミカエルの活躍に劣らず、一貫して描かれていたのは、女性への性暴力と児童ポルノへの激しい怒りと憤りでした。
東欧の政治不安や貧困につけ込んだ女性の人身売買(そこには当然のように薬漬けによる人格崩壊や権力と裏社会の繋がりなどが派生的に関連してくる)などについても描かれていました。
この作品もダークファンタジーとしての構成に絡めて、生理的に拒否反応が起きそうなレベルでおぞましく悲惨な、たぶん現実にあるような事件(※)として、怒りに満ちた描かれ方をしています。
※007やMIシリーズなどの映画でも、ロシアや東欧圏のマフィア絡みの人身売買がよく出てきますが、そりゃお前、映画の見過ぎだよ!ということならいいのですが、実際のところどうなんだろう。
異形の者を主体に描くことで、人間の醜い部分を〝あちら側〟の心情から見せる手法は『シェイプ・オブ・ウォーター』と同じですが、異形の者の〝悲しみ〟よりも〝怒り〟が勝る分、作品のインパクトは強かったと感じました。
凄い映画。
打たれたのは、こっちです
なんかイマイチ
これはすごい
すごいけど、、、
虫召する姫君
冒頭の主役のティーナのワケありの容姿と、何かを嗅ぎ分けられる能力を見せ付けられた時点でスピチュアルなお話かと思いましたが、良い意味で期待を裏切るファンタジー物でした。
当作品はアカデミー賞でメイクアップ賞にノミネートされたようですが、去年同賞を受賞したウィンストン・チャーチルとは違う生々しさと不気味さのある造形で「本当にこういう生き物がいるのかもしれない」感覚に襲われた気がします。ただメイクだけはなく、ノルウェーの森林のロケーション、主演俳優の演技力、シナリオ、演出力があってこその世界観で、その完成度はどれも素晴らしいと思いました。
人間と違う種族のお話は色々ありますが、この作品は生態の深い所まで描いており、それ故、描写的に好き嫌いは別れると思います。
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