「気になって仕方なかった」ボーダー 二つの世界 タピオカジャスミンティーさんの映画レビュー(感想・評価)
気になって仕方なかった
5時に夢中で中瀬さんが紹介していた映画。彼女の紹介映画は私の感覚にとても合っているのでなるべく見ている。
見た目が醜いけど、鼻がきいて異変が感知できる特殊能力を持つティーナは税関で働く日々を過ごしている。
無口だけど仕事に対して正義感を見せるティーナ。ヒモみたいな内縁の夫と森の中の家で暮らしている。父は痴呆なのか。施設に入っているが父の前ではほっとした表情を見せる。
おかしな匂いがする、と職場で嗅ぎつけたどこか、ティーナと似た容姿の男性ヴァーレと出会うことから変わっていく...
以下ネタバレします。
キツネやカモシカとやけに親しげなティーナ。犬にやたら吠えられる。
もはやキツネが夜中遊びに来てしまうレベル。どこか野生動物のよう。
人間とは染色体が違うため、特殊な能力を持ち、疎外感を持って生きてきた。
トロル..と唐突にヴォーレの口から出てくる単語は物語のなかでさりげない。
そうか、違って当然だった、ありのまま生きるのは素晴らしい...よかったね!旅をしよう!とはならず。。
仕事での活躍がかわれて幼児への性犯罪捜査を手伝っていたのに思わぬところでヴォーレとの関わりが露呈。
悲しいラストからの希望のある終わり方へ...。
他の方の感想を読むと「嫌悪感」「トラウマ」などのワードが出てきますが私は全く不快に思わなかったです。
人間になりたいと思ってるわけではないティーナがヴォーレというパートナーや旅する新しい生活よりも子供への加害への怒りを優先したのがすごい。
殺しあうようなセックスも、虫をクチュクチュ食べるのもさほど嫌悪感がなく。ひたすら土の香りと雨の音を感じる映像でした。全裸で川で泳ぐシーンがかなり多い!てか。虫。ミミズなのは最初の頃の不味そうなパスタの夕食に皮肉をこめている??
ティーナの両親もヴォーレの両親のように苦しんで亡くなったという比喩がある。裏庭に適当に葬られていたり。そこだけがすごく苦しい。
その状況ではティーナの義理の父がティーナを愛して育てたことがむしろ良かったのでは?と思うけど、ティーナの心からは複雑な気持ちと怒りが消えないようであった。ティーナのことは愛して育てたかもしれないけど、彼女の両親は見捨てた義理父だしね。醜い娘のことも思いやっている雰囲気があるのに。
しかし、ティーナとヴォーレの違いは人間に愛情を貰ったかどうかである。ティーナの行動は義理の両親の愛情が育んだ倫理観と彼女の優しさが現れていると思う。
子供が持てないと悲しげに言った彼女に残された希望。トロルの村に合流して暮らしました、という続きを期待したくなる。
むしろトロルを応援したくなる。
人間が醜い。取り替えっこされた若い夫婦には何も関係ないのに復讐されてるのは胸糞悪い..かな。
好きです。
自分が変わってて社会からの疎外感を感じている人はむしろあなたはトロルだ、と言われたいかもしれませんね。