「まだるっこい語り口で斬った米国の現実は陰鬱」魂のゆくえ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
まだるっこい語り口で斬った米国の現実は陰鬱
米国の小さな教会の牧師トラー(イーサン・ホーク)。
創立から250年を迎える古い教会であるが信徒は少なく、教会の運営費用は、歴史的教会が作ったいわゆる「土産物」。
創立記念事業が近づくある日、 妊婦のメアリー(アマンダ・セイフライド)から相談を受ける。
夫が環境保護事業にのめり込んでいる、のみならず、最近の夫は情緒不安定だ、しかも、夫は堕胎を迫る、と。
最近、体調が思わしくなく、酒に逃げているが、心底には神の意志を信じているところのあるようなトラーは、メアリーの夫と会談を設ける。
エキセントリックな風のある彼に対して、牧師として神の御心を説くトラーであったが、数日後、メアリーの夫は頭を撃って自殺してしまう・・・
というところからはじまる物語だが、ここいらあたりで尺の中盤というぐらい、描写がまだるっこしい。
陰鬱なトラーのモノローグ、陰鬱なキャメラ、さらに、ほとんど劇伴音楽はなし・・・と、まぁ、よっぽど体調がよくないと寝ちゃうだろう、と思う。
で、後半、一気に面白くなる・・・わけではない。
メアリーの夫が環境保護を訴えての自爆テロを計画していたことを知り、その爆発物埋め込みのジャケットをトラーは得、さらに、メアリーの夫が狙っていたのが自身の教会の上層教会に支援している複合企業だということがわかり・・・となるので、ありゃまぁ、『タクシー・ドライバー』の変奏曲かしらん、とも思うが、あの映画のようなカタルシス(個人的には不愉快なのだけれど)もない。
関心がないわけではない物語なのだけれど、どうにも独りよがりな感じは拭いきれず、その独断的な視点は好きになれない。
ま、独断的なのは宗教的な側面もあるのだろうが、最終的には、神には癒されず、愛した女性に救われるというのも、なんだか底が浅い。