「魂の死にゆくさまを7時間かけて描いた狂気の大傑作」サタンタンゴ JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
魂の死にゆくさまを7時間かけて描いた狂気の大傑作
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物語は医者を通して語られる
始めは単なる不倫関係や友情関係の縺れを描いているように見える。
しかしその後、あの場面ではあの時実は…的な展開で裏側を描く。
この構成が、7時間飽きずに見られる一つの要因だろうと思う。
そして、中盤にはとある少女と猫が描かれる。
それだけ見ると、邪悪で哀しい悲劇だ。
映画の丁度真ん中あたり。
タイトルでもある「サタンタンゴ」のシーンが訪れる。
(これも始めは少女視点だった)
しかし既に少女の結末を知っている我々は、
あのシーンが単なるタンゴのシーンでは無いと気付いていく。
あの長い長いタンゴの背景に、あの少女の死が浮かんで来るのだ。
淡々としかし慎重に描かれた序盤があったからこそ、
あのサタンタンゴがより陰鬱なものとして映し出される。
あの人生を描いたようなサタンタンゴは思い出しても不気味。
哲学者は延々と物事を語り、
疲れた男は女に触り踊り続ける。
娼婦は男を避けられず、
労働者はひたすらパンを運び続ける。
音楽家だけが演奏し続けることの出来る世界。
ああして人生を切り取ったとて、唯一滅びないものが表現活動なのか、とも思ったりした。
そこからは一気に黙示録へと進んでいく。
ラストシーンも秀逸で、どこを切り取っても素晴らしい構図だった。
オールナイトで鑑賞を終えた後、
出て行った翌日の朝の景色は、生まれ変わった自分のようだった。(気がした。)
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