劇場公開日 2024年10月25日

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「カフカ的な悪夢的リアリズムに打ちのめされる」サタンタンゴ マエダさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0カフカ的な悪夢的リアリズムに打ちのめされる

2019年9月23日
iPhoneアプリから投稿

まずは彼の長回しの手法を理解する必要がある。
キュアロンのような表現美や構造美、
タルコフスキーやアンゲロプロスのような映像美、
そのような長回しではない。
確かに構図としてはどのショットも配置や動きは言葉では表しがたい素晴らしさがあるが、それは美しさというよりも、悪夢的な現実に打ちのめされるような、頽廃的なものなのだ。
反吐がでるほど執拗に退屈な生活風景(これは後にニーチェの馬で洗練される)、終わることのない貧しさから無力感に支配される登場人物たち、ひたすら攻撃的な豪雨、暴風に常に晒され、あてもなく家畜が彷徨う果てない泥濘みの世界、微かな希望に縋るも、進めど進めど何処にもたどり着かない、霧に包まれた明日(ここから分かると通り、カフカ的な不条理感が濃厚)。
上記から分かる通り、この映画を視聴するには相当な覚悟が強いられる、と思いきや、キツイのは序盤だけで、この世界観を把握できると中盤からはこの世界感に没入できる、誠に不思議だが。

冥土幽太楼