「こじんまりとした佳作」ルパン三世 THE FIRST sanchuさんの映画レビュー(感想・評価)
こじんまりとした佳作
『ドラゴンクエスト ユアストーリー』の件等で、一部の人に異常に目の敵にされてる山崎監督。同じ3Dアニメ作品ということもあってか、本作も公開前から一部悪評を流される始末。
でもご安心を、本作はなかなか面白い作品に仕上がっております。
少なくとも、ここ10年ぐらいのTVスペシャル版ルパンの中ではベスト3に入る出来栄えではないでしょうか。 (まあ、比較対象に問題があるだけかも…最近のも酷かったし…)
とは言え、手放しで絶賛できる程出気が良いか?…というと、そうでもないのが悲しいところです。CGのクオリティは高く、見せ場となるシーンも序盤に多くあるんですが、どういうわけか終盤になるに連れ、地味になっていくという…
(最近見た映画がほとんどそんな感じなんですけど、最近の流行なんですかね…)
最近の山崎監督の作品の多くに言えるんですけど、合格点には達しているものの、大満足!…とはならないんですよね~。「不可」ではないけど「可」か「良」…という感じです。
原因としては、演出が薄味になっているというか…ベタベタな演出・展開で良いのに、あえて「あっさり」仕上げている感じがするんです。
本作で言うと、 ルパン『THE FIRST』 というタイトルであるにも関わらず、アルセーヌ・ルパンについての掘り下げがほとんど無い!という不思議な展開があげられます。
ルパン1世とブレッソン教授の関係性と、あえて古代の秘宝(エクリプス…でしたっけ)を隠した想いをきっちり描くことで、孫世代のルパン三世とレティシアの奮闘が盛り上がる筈なんですが… 遺跡に残っていたステッキとシルクハットも有効に作用しますしね。
掘り下げが足りないのは、悪役側も同様。
ランベールの数十年に渡る屈辱の蓄積と、コンプレックスが充分描けていない。嫌味な上司に毎日いびられているぐらいにしか思えないんですよ。屈折した感情が爆発しての大暴走!…なのにレティシアを命をかけて守ってしまう…ただの駒の筈だったのに… と、いう展開がいきてくるんですけどね…
ゲラルトも、本気で第三帝国を復活させよう!という意思がいまいち感じられない。台詞の上ではあるんですけど、まさに『台詞』としか思えないんですよね…。この人がラスボスなんだから盛り上がりようが無い…。
早い話、キャラクターの『情念』があまり感じられないので、決定的な盛り上がりに欠けるんです。個人的なルパンのベスト作品は、1997年の「ワルサーP38」なんですけど、それと比べてなんと薄味なことか…。クライマックスも良く分からない海の上とかじゃ無くて、パリ上空とかニューヨーク上空での決戦にすれば良いのに…
なんだか批判的なことを書き連ねてしまいましたが、基本的には面白いんです。
ただ痒い所に手が届かないというか、突き抜けてくれないんです。そこが惜しいですね。