「作られるべくして作られた、家族と継承の『ゴーストバスターズ』!」ゴーストバスターズ アフターライフ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
作られるべくして作られた、家族と継承の『ゴーストバスターズ』!
2016年に女性メンバーで出動したが、今度は子供たち。
子供向けに劣化…と思うなかれ。そこがミソ。
オリジナル『1』『2』の正統な続編として製作された本作。単なる続編じゃない。
物語の中でも作り手側にとっても特別な思いが継承された、作られるべくして作られた続編なのである。
都会のアパートから立ち退きを余儀なくされたシングルマザー一家。母キャリー、兄トレヴァー、そして12歳のフィービー。
オクラホマの田舎町にある祖父が遺した古い屋敷に引っ越す事に。
屋敷の地下室は何かの秘密の研究室のようで、ヘンテコなメカニックがいっぱい。一体これは…? 祖父は何者…?
やがてフィービーは、祖父がかつてNYをゴーストから守った“ゴーストバスターズ”の一員であった事を知る…。
本作の主人公一家は、“スペングラー”。前2作で故ハロルド・ライミスが演じたイゴン・スペングラーの家系に当たる。
祖父はあのゴーストバスターズ。有名人どころか、NYのヒーロー。
さぞかし家族は鼻高々。
…アレ?
母は自分の父に対して遺恨あり。フィービーも祖父の事を何も知らなかった。
スペングラー一家に何があった…?
これは後々分かった事だが(これを教えてくれたのはアノ人!)、大活躍したゴーストバスターズも徐々に依頼が減り、廃業寸前(『2』の始まりもそうだったような…)。そんな時イゴンがガジェットや車を持って(盗んで…?)田舎町に姿を消し、メンバーも各々の道を行き、自然解散。イゴンは来る恐ろしい事態に対処していた。
それに没頭する余りイゴンは家族をないがしろにし、家族を捨てたと父を嫌う母。
町でもイゴンは頭がヘンなイカれたジイサン。
そもそもゴーストバスターズ自体、30年のNYの“都市伝説”。あれだけゴーストが大暴れしたのに、今じゃもう誰もゴーストの存在を信じていない。
ゴーストバスターズはもはや忘れ去られた過去の遺物なのか…?
イゴンも家族の恥なのか…?
町では原因不明の地震が頻発。
フィービーらがレプリカと思っていたガジェットをいじっていると、中から“何か”が飛び出す。それを機に、町にゴーストが出没。
また、郊外の山の奥深くでは、恐ろしい存在が蠢く。
こんな時こそ、僕らのゴーストバスターズ! …が、彼らはもう居ない。
彼らに変わってガジェットを手に取ったのは…
一人の少女が納屋でガジェット=プロトンパックを見つける。
まだ少女のキャラ設定や背景も構築されていなかったが、突然頭に浮かんだこのアイデアが本作製作のきっかけになったという。
家族の一人がゴーストバスターズだった。家族やその後の物語としてもこれ以上ない発想。
それを思い浮かんだのは、監督ジェイソン・ライトマン。いちいち言う必要もないだろう。前2作の監督、アイヴァン・ライトマンの実子。
ジェイソンが『ゴーストバスターズ』の新作を撮ると知った時、感慨深いものを感じた。息子が父の作品を受け継ぐ。しかもジェイソンは当時の撮影現場も見学し、自称“『ゴーストバスターズ』の最初のファン”。
インディペンデント作品の人間ドラマで優れた手腕を発揮し、父は果たせなかったオスカーノミネート(2度)もされたジェイソン。
そんなジェイソンにとって本作は初の大作エンタメであり、キャリア最大のプレッシャーだったろう。ジェイソンの手掛けた作品は秀作揃いだが、父の『ゴーストバスターズ』は今尚愛され続ける名作。
安易な続編は作れず、もしファンを落胆させ、父の名を汚すような事でもしたら…?
そこでジェイソンは、大胆な別アプローチ。前2作はとことん楽しいエンタメだったが、本作はジェイソンならではの演出でドラマをしっかり描く。
なので正直、序盤はちょっと退屈でもあった。前2作とはまるで作風が違う。しかし…
祖父が元ゴーストバスターズだと知る。孫娘フィービーがプロトンパックなどガジェットを手に取る。新たな小さなゴーストバスターズとして、町に現れ始めたゴースト退治を開始。ゴーストたちも登場。
物語の面白味もエンタメ性も徐々に増していった。
埃を被ったゴーストバスターズ専用車=ECTO-1に乗ってゴーストを追うチェイス、現代CG技術によって迫力を増した捕獲ビームなどのガジェット兵器、壮大なスケールのクライマックス…これが初の大作エンタメとは思えないくらい、見せ場を抑えたジェイソンの演出も快調。
『1』との繋がりも濃く、ファンならニヤリとする事間違いナシ。
ジェイソン人間ドラマとアイヴァンの『ゴーストバスターズ』が巧みに融合。
劇内外でも家族のドラマへと昇華し、見事に継承された『ゴーストバスターズ』にもなった。
登場人物らは皆揃いも揃って何処か頼り無さげ。そこがまた前2作と通じる。
フィービー役は『gifted/ギフテッド』で名演を魅せたマッケナ・グレイス。ボサボサヘアに眼鏡でハロルド・ライミスを彷彿させる風貌。
ヘタレ男子の兄や取り憑かれてしまう母もユーモラス演。
本作一番の笑わせ役はポール・ラッドかと思ったら(教師役とは言え普通授業で『クジョー』や『チャルイド・プレイ』を見せる…?)、フィービーの同級生の男の子。笑わせズッコケな役回りは、前2作のリック・モラニス的な立ち位置…?
唯一真面目なのは兄の同級生の女の子くらい。
そんな彼らが一致団結して立ち向かっていくラストは胸アツ。
特に、ECTO-1の飛び出す座席から身を乗り出したり、プロトンパックを構えるフィービーの姿は逞しくもあった。
少年少女たちが不思議な体験を通して成長していく様は、オリジナル当時の80年代のジュブナイル・エンタメをも醸し出している。
『ゴーストバスターズ』のもう一つの主役でもあるゴーストたち。
新ゴーストも居れば、やはりワクワクなのはお馴染みのゴースト。
マスコットキャラでもあるマシュマロマンも登場。その登場の仕方が変化球。マシュマロマンと言えばビッグサイズだが、今回は“マシュマロサイズ”。なら可愛い。…否! 大量出没し、ビッグサイズよりチョー厄介。でも、可愛いから困った者。
今回のラスボスは、『1』でも登場した魔神ゴーザ。二頭の魔犬も勿論。
懐かしく嬉しくあると共に、ここは新キャラじゃないんだ…と少々。しかしこれが、クライマックスのビッグサプライズに繋がる…!
『1』と繋がり濃く、ゴーザが再び復活。
そのゴーザに苦戦。絶対絶命。その時…
“神”助けに現る。キターーーッ!!
ビル・マーレイ! ダン・エイクロイド! アーニー・ハドソン!
オリジナル・メンバーの登場。約30年越しの続編、やっぱりこれがないとね!
老いたけど、真面目なアーニー、仏頂面のダン、相変わらずの皮肉屋のビルは健在。
EDクレジットには、シガニー・ウィーヴァーの名も。3人以上の特別出演枠だけど、次があったらまた本編に絡んで欲しいな。
3人が最後美味しい所を持っていくのではなく、あくまで“助っ人”。ちゃんとフィービーが決着を付けるのがいい。
そしてもう一人、まさかの特別超サプライズ出演が…。
ゴーザの怪光線とフィービーのプロトンパックからの捕獲ビームのぶつかり押し合い。
あわや!…その時、フィービーの隣に突然現れ立つ“人物”。
祖父イゴン。
故ハロルド・ライミスがCG合成で“出演”。
ゴーザを退治した後、家族各々との“再会”。
科学者の祖父と科学好きの孫娘。その繋がりが最も表された瞬間。
父に対し遺恨あった母が父と抱き合うシーンは感動。実は地下研究室にはガジェットの中に、娘の写真が沢山。決して見捨てず、不器用ながら見守っていたのだ。
それを涙ながらに見つめるかつての仲間たち。特にビル・マーレイの表情は胸打つ。と言うのも、『ゴーストバスターズ』後マーレイとライミスは仲違い。それもあって『3』は作られず、そのままライミスは死去…。父娘の和解であると同時に、マーレイとライミスの和解の瞬間でもあった。
3人と幽霊体のイゴンが並んで立ち、プロトンパックを背負って捕獲ビームを発射するシーンは、ファンなら感涙モノ。
そう、我々はもう一度、この彼らの姿が見たかったのだ!
本編終わり、EDクレジット直前に“ハロルドに捧ぐ”。
プロデュースに携わったアイヴァン・ライトマンは本作が遺作に。2月の日本公開直後だったから、結構ショックだった…。
家族の繋がりを受け継ぐ。
亡き父のレガシーを受け継ぐ。
亡き盟友の思いを受け継ぐ。
EDは待ってました!…のお馴染みのテーマソング。
家族のドラマとして再構築した新たな『ゴーストバスターズ』であり、きちんとポイントを抑えたれっきとした『ゴーストバスターズ』。
ファンも作り手も亡くなったアイヴァンもハロルドも本作には納得満足。もう一度言おう。作られるべくして作られた、最高の形の続編!
更なる続編の製作も決定。継承し、どう進化していくか、やはり楽しみ!
今回“無かった事”になってしまった2016年の女性リブート版。
そのキャスト陣からは“疎外”された扱いに女性差別だと当初非難の声が挙がったが、アイヴァン・ライトマンは決して全くの無視ではなく、“誰でもゴーストバスターズになれる自由性”に感謝しているという。
願わくば、“ゴースト・マルチバース”なんかを利用して、コラボを…。でも流行りとは言え、流石に狙い過ぎかな…?