「類稀なる最後の人類」町田くんの世界 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
類稀なる最後の人類
漫画の実写化のようだ。
見始めれば止まらなくなってしまう魅力ある作品
「世界は悪意に満ちあふれている」
記者のヨシタカはこの世の中にまん延する悪の正体を探し続けている。
それを暴くことが正義だと思っていた。
デスクの指示もあってその方向はゴシップへと向かう。
「ゴシップというくだらない仕事 でもそれを皆待っている 人はみな他人の悪事や不幸が大好きだ それを見れば安心する 自分はマシだと」
結果的に俺たちは、人を喜ばせている。そうデスクは言いたかったのだろう。
ヨシタカは町田くんのうわさを聞く。
彼の生き方に一縷の望みを感じた。
「町田くんにはこの世界がどんな風に見えているのだろう?」
さて、
ハチャメチャな物語だが魅力にあふれている。
「人が好き」
「いまの時代、『人が好き』って言ってる時点でヤベーぞ」
サカエのもっともなセリフ
誰も見て見ぬふり 自分だけよければいい
なるべく他人と関わらないように生きている この時代
そこに登場する最後の「人類」が町田くん
彼にとって、困っている人に手を貸すのが最優先事項
この時点で人が好きという概念を実行している。
しかし彼は恋愛と好きの区別がつかないことに悩む。
一般的に一目惚れというのはあるだろうが、確かに特定の誰かを好きになっていく過程の中でそれにいつ気づくのかはあまり考えたことがない。
ただ、恋という意味において「好き」という気持ちは明確になっている。
おそらく町田くんは、そもそも人が好きの好き度が恋に近いところまであるのだろう。
西野が間違えて町田くんのシューズボックスにラブレターを入れたのにもかかわらず、西野の想いに対する誠実さに「うれしいと思う」という言葉はなかなか出ないだろう。
恋を言葉にする。
そんなことは誰も思わないし不必要だと思うが、恋が何かを言葉にしようとすればこのような作品になるのだろう。
町田くんは好きと恋の違いについてイノハラに尋ねる。
「好きって、どういうこと?」
「もう一回井戸に落ちろ!」
誰もが持つこの感覚がなぜ町田くんにはわからないのだろうと誰もが思う。
最後に父が言う。
「わからないから知りたい 何もかもがわからない だからこの世界は楽しいし素晴らしい わからないからと言って目をそらしたらダメだ 向き合わなければならない」
そしてそれが恋かどうかは「自分の胸に聞け」
しかし、
誰にもある感覚がない人物を作り上げるだけでこのように面白い作品になるとは恐れ入る。
町田くんはヒムロに対し「想像する」ことを伝える。
プレゼントひとつに込められた気持ち
この世界を違った見方で見てみよう。
些細なことでいいから、思いやりの気持ちを持ってみよう。
この作品は「恋」という言葉にできないから「わからない感覚」をモチーフに、人を思いやる気持ちを人々に伝えているように思った。
ハチャメチャが面白く、素晴らしい作品だった。